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地上デジタル完全移行 被災の東北3県は延期へ

総務省は2011年4月20日,東日本大震災で甚大な被害のあった岩手,宮城,福島の東北3県について,2011年7月24日に予定している地上テレビ放送のデジタル化への切り替えを最大で1年間延期することを決め,現行電波法の改正を国会に提案することになった。

総務省の調査によると,東日本大震災の被災地では,デジタル中継局が津波で流失したり,多くの世帯で地上デジタル受信設備が損壊したりするなどして,東北6県では約7 万4,000世帯,このうち岩手,宮城,福島の3県では約5万9,900世帯でデジタル化への対応が必要となっている。地上波テレビのデジタルへの完全移行は11年7月24日に予定されているが,被災地の状況から,あと3か月ではデジタル対策の徹底は困難で,アナログ放送の停止によって災害情報の入手が困難になる被災者が出るおそれもあることから,総務省は3県についての延期を決めた。

延期されれば放送局にとっては,新設のデジタル放送機器だけでなく,従来のアナログ放送機器の維持も必要となり,大震災による被害と合わせて負担が大きくなることから,日本民間放送連盟は延期に反対していた。正式決定を受けて,民放連は必要経費の負担を政府に要請する考えを表明した。

3県以外に青森,秋田,山形の各県で,関東でも茨城県では対応必要世帯が9万世帯にのぼるなどの被害が出ているが,総務省は移行対策を集中的に行い,予定通りデジタル化を実施することにしている。

奥田良胤