メディアフォーカス

エクアドル,大統領のメディア政策に国内外の懸念高まる

南米のエクアドルでは,ラファエル・コレア大統領が新聞記事や書物などによって名誉を傷つけられたとして,今年(2011年)の2月以降,執筆したジャーナリストらを相手取って総額で9,000万ドル(約74億円)におよぶ損害賠償や懲役刑などを求める訴訟を相次いで起こし,国の内外で波紋を呼んでいる。

大統領側に問題とされたのは,昨年9月の非常事態宣言の際に大統領が軍に病院を襲撃するよう命じたとする新聞記事や大統領の実兄が経営する会社と政府との巨額の取引契約における不正を想起させる書籍などで,執筆したジャーナリストらのほか新聞社の経営者も提訴されている。

これに対し,国境なき記者団(RSF)や国際的な人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチなどは,提訴は言論の自由を脅かすとして懸念を表明している。また,域内の35か国が加盟する米州機構(OAS)の米州人権委員会は4月15日,提訴の根拠となっている国内法が米州機構の言論の自由に関する原則に抵触しているとして法の廃止を求める声明を発表した。これに対し,エクアドル政府は「内政干渉で受け入れがたい」と拒否する姿勢を示している。

エクアドルでは5月7日に国民投票が予定されているが,そのひとつの焦点がメディアに対する規制機関の設置の是非を国民に問うというもの。憲法によって言論の自由が保障されているとは言え,規制機関の設置によって言論に対する政府の規制がさらに強化されることにつながるのではないかと危惧する声が高まっている。

斉藤正幸