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米公共放送,赤字減らしのための補助金削減案に強く反発

アメリカで巨額の財政赤字を減らすため,歳出削減策などを検討してきた委員会がまとめた案に,公共放送への補助金5億ドル(約400億円)を削減することが含まれていたことから,全米の公共放送局へ予算配分などを行うCPB(Corporation for Public Broadcasting,公共放送機構)などは,多くの国民から番組やニュースを奪うものだとして,削減に強く反対している。

超党派の連邦議員など18人で作る『財政の責任と改革に関する全米委員会』は,オバマ大統領の指示で,14兆ドルに上る巨額の赤字を減らすための大規模な歳出削減や増税の草案をまとめ,11月10日に発表した。大幅な軍事費カットやガソリン税の増税,年金の支払いを遅らせるための定年引き上げなど「全てを検討の対象とする」案には,各界から「現実的でない」などの反発が出ている。公共放送についても「過去最高の歳入を確保している」として,2015年に5億ドルの補助金カットを提案している。これに対してCPBは,「公共放送は国民1人あたりの負担額1.35ドルの6倍の価値を作り出し,1万7,000人分の雇用を創出している」としたうえで,特に過疎地住民や低所得者層にも等しく番組やニュースを届ける地上波の公共放送は,日常生活のライフラインになっているとその重要性を強調し,削減に強く反対している。

今回の削減案は12月に最終報告書が提出された後,18人中14人が賛成すれば2015年から実施されるが,多くの利害が生じるため調整は難航することが予想される。

柴田 厚