メディアフォーカス

解説委員解雇問題と中間選挙の共和党勝利で再燃するNPR批判

リベラルな報道を行うNPR(全米公共ラジオ)への保守派の批判が再び強まっている。番組内での発言に問題があったとして解説委員をNPRが解雇した問題と,昨年11月の中間選挙で共和党が勝利したことから,公共放送に対する政府補助金を削減するべきではないかという,長年にわたる議論が改めて起こっている。

NPRは昨年10月,イスラムに関するコメントが不適切だったとして解説委員を解雇したが,FOXニュースをはじめとする保守陣営からはNPRの“リベラルに偏り過ぎた”報道姿勢に批判が強まっている。また中間選挙で共和党が勝利したことに加え,公共放送に理解のあった議員が多数落選したため,公共放送に政府から毎年4~5億ドルの補助金が出ていることに批判的な共和党議員が,不況などを理由に,補助金を停止するよう訴えている(次項も参照)。次期下院議長を務めるとみられるジョン・ベイナー議員は「国の財政が崩壊しかかっているときに,“左翼(left- wing)”のラジオ局に税金を出すことが必要なのか?」と発言した。これに対してNPRのビビアン・シラー会長は,大学のジャーナリズム学科の講演で「ビジネスが成り立たないという理由で商業放送局の特派員が次々に撤退する中,公共放送NPRはイラクやアフガンにとどまり“地に足をつけた報告(boots-on-the-ground reporting)”を送り続けている。我々が作っているのは,電子的操作で細分化できる“コンテンツ”ではなく,生きた人間の生活を扱う“報道”だ」と,NPRの独自性と必要性を強く強調した。

柴田 厚