メディアフォーカス

ドイツ:受信料制度の将来を考える国際シンポジウムを開催

「メディア変革の時代における受信料の将来」と題した国際シンポジウムが5月6日と7日,ケルン大学放送経済研究所とBFA(Broadcasting Fee Association, 放送受信料連盟)の共催により,ドイツのボンで行われた。ヨーロッパの公共放送・受信料徴収機関の関係者や,メディア法の研究者らが参加し,放送受信機器の多様化など,昨今のメディア環境の変化を背景に,公共放送の財源制度をどのように再構築すべきかを議論した。

共通認識として,公平な負担が実現していない現状に対する危機感があり,その是正をめざした具体的な動きも報告された。なかでも,ドイツ・スイス・フィンランドでは,現在,受信料支払義務の根拠を「放送受信機器を所有していること」に置いているが,これを撤廃し,受信機器の所有・非所有に関係なく,各世帯に支払義務を一律に課すことが検討されている。制度改正には,各国の憲法,またEU加盟国ではEUの競争法に抵触しないことが条件になるため,法的側面からの検証が専門家によって行われた。

また,主催者の一つBFAは,徴収実務を担う立場から,公共放送のために広く負担を求めるには,実際の徴収金額や,それで賄われる放送サービスの質を含め,説得力のある枠組が必須だと指摘した。ヨーロッパには,受信料徴収を専門に行う機関があり,BFAには13か国の機関が加盟している。それら機関が,BFAを情報交換の場とし,各国法制の違いを超えて,課題を共有してきたことが,制度の実効性を重視した議論につながった。

伊藤 文