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石川県珠洲市で地デジ移行リハーサル48時間にわたりアナログ放送を休止

2011年7月に予定されている地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた課題を洗い出そうと,能登半島の北端に位置する石川県珠洲市などで1月22日から 24日にかけて,アナログ放送終了リハーサルが行われた。リハーサルは2009年7月に続いて2回目で,今回は48時間(前回は1時間)にわたって行われたが,大きなトラブルはなく終了した。

リハーサルは総務省が主体となって実施したもので,前回同様,珠洲中継局がカバーする珠洲市と能登町内浦地区の約7,500世帯が対象となった。1月 22日正午にリハーサルが開始されると,NHK総合と教育のアナログ放送は,リハーサルを実施していることを告知する画面に切り替わり,地元の民放(北陸放送,テレビ金沢,石川テレビ放送,北陸朝日放送)のアナログ放送については,実際に電波が止められて「砂嵐」画面になった。

リハーサル期間中,総務省石川県テレビ受信者支援センター珠洲支所(デジサポ珠洲)には電話で49件の問い合わせがあり,このうち,国が無償で貸与している簡易チューナー関連の問い合わせが33件と最も多く寄せられた。具体的には,「チューナーをセットしたが映らない,使い方がわからない」(11件),「新たにチューナーを貸してほしい」(10件),「チューナーの台数を追加してほしい」(8件)といった内容で,デジサポ珠洲では,チューナー関連の問い合わせを中心に,30件については実際に現地に出向いて対応を行った。

今回,リハーサルの対象となった世帯のうち,直接アンテナで放送を受信しているのは,3,000世帯程度と見られているが,事前に簡易チューナーを貸与する対策(約3,800台貸与され,2,000世帯程度に行き渡ったと推定されている)が取られたことから,デジサポ珠洲では,ほぼ100%の世帯で地デジ対応が行われたとしている。一方,ケーブルテレビ経由でテレビを視聴している約4,500世帯については,デジタル放送をアナログに変換して送信する「デジアナ変換」が行われたことから,リハーサルの実施によってテレビがまったく見られなくなるといった事態は生じなかった。

今回,リハーサルが行われた珠洲中継局については,全国よりも1年先行して,2010年7月24日にアナログ放送を完全に停波することが予定されている。このため,放送事業者などで作るデジタル放送推進協会(Dpa)では,リハーサルの対象となった全世帯に対してアンケート調査を実施し,想定外の問題が生じていないか改めて確認を行うことにしている。また,珠洲市内には,珠洲中継局以外にも山間部などに小規模な中継局が7つあり,約1,300世帯が利用してきたが,それらも7月24日に停波する予定になっている。ほとんどの世帯はケーブルテレビに移行しているものの,一部,直接受信の世帯が残ることから,これらの世帯について,ケーブルテレビ移行への納得を得ることも必要となる。

今回のリハーサルは,地域社会の協力を得ながら入念な周知活動が行われ,簡易チューナーが無償で貸与されるなど万全な態勢のもとで行われた。ただ,全国各地で同様のきめ細かい対応をとることは困難と考えられることから,今回洗い出された問題を整理し,都市部を含め,どのようにして効率的に対策を進めるかが今後の検討課題となる。

村上聖一