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NHKオンデマンド1年 各社VOD収益化に模索続く

2008年12月1日に始まったNHKオンデマンドが開始から1年を迎えた。民放を含めたビデオデマンド(以下,VOD)事業では,各社とも収益化への模索が続けられている。

NHKオンデマンドの開始1年間のPC向け利用状況をみると,延べ訪問者数は610万人,登録会員数は25 万6,000人。番組が見られた回数は353万回,ページビューは5,382万回であった。訪問者数を都道府県別でみると,東京都が230万人でトップ,次いで大阪の77万人,神奈川37万人,愛知27万人,千葉19万人と続き,訪問者は大都市圏に集中している。登録会員の男女比は,男性が74%,女性が 26%で,男性の30代~50代が全体の52%を占めている。年代別で最も多いのは,男性では40代,女性では30代と40代で,ここ半年間で30代以下の若年層と女性の占める割合が増加傾向にある。

アーカイブ番組の「特選ライブラリー」で最も多く見られた番組(有料)は土曜ドラマ『ハゲタカ 第1回 日本を買い叩け!』で,ビデオビューが1万1,738回。次いでNHKスペシャルの『地球大進化 第1集』,『宇宙 第1集』,『映像の世紀 第4集』が続き,ドラマやドキュメンタリー,宇宙や歴史関連の番組に人気が集まった。見逃し番組では,NHKスペシャルの『魔性の難問~リーマン予想・天才たちの闘い~』が4,540ビデオビューで1位となり,上位30タイトル中半数を「NHKスペシャル」が占めた。

売上げは当初の見込みを大幅に下回った。NHKオンデマンド室(以下,NOD室)では権利処理作業の省力化と認知度の向上を課題と位置づけ,今後,権利関係者とのルール作りや作業の効率化を進める一方で,認知度向上策としてキャンペーンの拡大などを掲げている。

利用環境の整備も進める。TV向けサービスでは,J:COM,アクトビラ,ひかりTVに加えてKDDIグループのJCNでも視聴可能となった。今後,アクトビラ対応機器の普及も見込まれることから,NOD室ではTV向けサービスを「本命」と位置づけ,利用増に期待を寄せている。PC向けの動画フォーマットも,今年4月に,OSやブラウザを選ばないFlash Videoを採用することで利用者の拡大を図る。さらにコンテンツの面でも,2008年度に人気を博した大河ドラマ『篤姫』を今年1月に投入,2月にはバンクーバー冬季オリンピックの中継競技を30日間配信するなど,更なる充実を図ることにしている。

一方,民放各社も,VOD事業は収益化に至っていない。唯一全タイトルを無料で視聴できる「第2日本テレビ」は,独自の広告モデルを生み出すなどして 09年10月に2度目の単月黒字を実現させたが,累損解消までの道のりは長い。有料課金モデルの「フジテレビOn Demand」は,携帯やPCなどメディアごとに人気コンテンツが生まれつつあるが,全体の黒字化を模索している段階だ。本業のTV広告収入が減少するなかでネット事業を放送外収入の柱の一つに成長させたい民放各社だが,無料か有料かの選択,またYouTubeやGyaO!などの配信サイトとの提携やその利活用をめぐって,さまざまな試行錯誤が続けられている。厳しい局面を打開するため,業界挙げての共同配信サイトを開設すべきとの声もあがっている。

小川浩司