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オーストリア,公共放送の監督機関設置へ

欧州連合(EU)の欧州委員会とオーストリア政府は10月28日,オーストリアの公共放送ORFに関する制度改正について合意したと発表した。改正のおもな内容は,ORFの公共放送任務をより明確に定義すること,ORFの監督機関を外部に新設し,そこが,ORFの任務達成状況をモニターするとともに,ORFに対して財源が過剰に与えられることのないよう監視すること,ORFへの苦情を受け付けて対応すること,新しいサービスの導入については,公共サービスとしての価値や市場への影響を事前に審査することである。ORFでは,35人の学識経験者らで構成される内部監督機関である財団評議会が経営を監督している。この組織は存続させるが,オーストリア政府は今後1年で,新しい体制を作る。

欧州委員会の競争政策担当部門は,オーストリアの新聞・商業放送事業者らが,ORFに対する公的財源の保障は,市場での競争を不当に妨げている,と苦情を申し立てたことを受けて,ORFの財源制度の調査を2004年に開始した。EUでは,共同市場での公正な競争を推進する立場から,加盟国の政府が事業者に財政支援を行う「国家補助」をEC条約によって禁止しており,公共放送を含めた公共サービスに限り,条件付きでこの規制の適用除外を認めている。欧州委員会は,ORFのインターネットサービスと,スポーツ専門チャンネルORF SPORT PLUSに関し,任務の定義が不明確で,その達成状況が適切に監督されていないとして,2008年1月,オーストリア政府に制度改正を要請していた。

伊藤 文