メディアフォーカス

「テレビの将来」高校生は期待,大学生は懐疑的

~“デジタルネイティブ”視聴実態調査~

放送倫理・番組向上機構の「青少年委員会」は2009年10月9日,多様なメディア環境の中に生まれ育った“デジタルネイティブ”といわれる世代(16 歳~24歳)311人(東京都内在住)を対象にした番組視聴実態調査の結果を公表した。調査は,08年11月にアンケートと番組表記録によって行われた。

調査によると,視聴前後の行動では,従来型の「番組の内容について,知人・友人と直接会ったとき話題にする」が50.2%,「番組の放送予定について,友人・知人と直接会ったとき話題にする」が32.8%であったが,新しい情報行動として「番組内で出てきたことがらについて,インターネットで検索する」が23.5%,「番組を見ながら,番組の内容について,友人・知人とメール交換する」が19.6%あった。テレビを見ながらの行動では,「携帯電話でメールやサイトを閲覧する」ことを「よくする」「時々する」を合わせると64.9%,「携帯を特にあてもなくいじる」は33.7%で,携帯との並行行動が目立った。

テレビ,ゲーム機,携帯電話,パソコンの中で大切だと思うものの順位調査では,携帯電話を1位に挙げたのが69.5%,次にパソコンが16.1%,テレビは11.6%だった。しかし,携帯電話を1位に挙げた人のうち,テレビを2位に挙げたのが57.9%で,携帯電話とテレビの支持には一定のつながりがあると調査班は分析している。

余暇で重要なことは,携帯電話のメールが74.2%で,テレビ視聴の71.3%を上回った。携帯電話やパソコンによるメールは,若年層の情報行動の中心的位置を占めており,ほぼ毎日携帯電話でメールのやり取りをしている人は77.4%にのぼった。

若年層にとって,「動画投稿サイト」の利用が生活に入り込んでいることが調査によって浮き彫りになったが,7割近い人が著作権に関して問題意識を持っていなかった。

「今から12年後(2020年),日本に住む人々にとって,テレビはどうなっていると思いますか?」に対しては,「今よりももっと見られるようになる」が35.7%,「今ほどは見られなくなる」が29.3%,「変わらない」が29.3%で,三等分されるかたちとなっている。世代別では,高校生の 51.3%が「今よりもっと見られるようになる」と期待しているのに対して,大学生は27.2%で,テレビの将来に関して,高校生には一定の期待があり,大学生には懐疑的な傾向が出ている。

“デジタルネイティブ”世代にとっては,携帯電話は大きな存在であり,年代が上昇するとテレビの存在が薄れていくという結果が出ているが,テレビがないと困るとの回答が全体の49.5%あったことなどから,「テレビがなくてもよい」「テレビは将来見られなくなる」と若年層が考えているとの見方は必ずしも一般的なものではないことがわかったと,調査班は分析している。

青少年委員会の汐見稔幸委員長は調査結果について,将来はテレビのオーソドックスなスタイルにこだわるタイプと,テレビよりも携帯あるいはテレビプラス携帯,パソコンプラス携帯など多様化するメディアを柔軟に組み合わせていくタイプなどに分化する可能性が読み取れる,としている。

奥田良胤