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NHK“約束”評価委員会 4年間の信頼回復度を総括

NHK“約束”評価委員会(委員長・辻正次兵庫県立大教授)は,不祥事のあと,NHKの信頼回復度を検証するために2005年度に設置された第三者機関で,毎年,NHKが視聴者に約束した項目が実際にどの程度果たされたかを調査してきた。今年は,08年度単年度だけでなく,この4年間でNHKはどのように変わったかを2009年6月23日に発表した。

それによると,視聴者から見たNHKの4年間の変化については,

  • 放送の分野で05年度と08年度を比較すると「NHKの各波接触者率(6月)」は向上し,NHKの番組は以前と比べて多くの人に視聴されるようになっている。
  • 視聴者のNHKのテレビ番組に対する満足度,NHKの総合テレビの重要度認識が向上しているので,視聴者の視点に立った番組改革の努力は着実に成果を出している。
  • 受信料収入も05年度の6, 024億円から08年度には6,386億円にまで回復し,ピーク時には128万件に達した支払拒否・保留の件数も08年度末には48.9万件に減少した。「受信料を支払わないことでNHKに反省を促したい」などとする視聴者の率は低下してきており,NHKに対して懲罰的な考え方は収まってきている。
  • NHKの組織や経営の信頼度もこの4年間向上しているが,「NHK視聴派の割合」と「国民のための公共放送だから,みんなでその経費を負担する必要がある」という考え方には,この4年間であまり変化はない。 NHKにおいては,視聴者層の拡大と受信料制度に対する理解促進が依然として重要な課題として残されている。
と指摘している。

一方,4年間のNHK内部の変化については,

  • 4年前には厳密な経営管理の仕組みが組織内にあまり見られなかったが,具体的かつ定量的な組織目標・個人目標の設定が個人レベルまで定着するなどNHKの業務マネジメント力が向上してきている。
  • 管理会計導入への取り組みは,放送総局で「トータルコスト」の実体化を目的とした検討が進められている。NHKの事業運営の透明性の確保は,視聴者からの信頼回復のためにも必要なことである。
  • 多様な世代の価値観を前提とした番組開発については,若年層対策が最重要の経営課題となっている。ここ1~2年は若年層をターゲットとした意欲的な番組開発が目立つようになったが,まだ十分な成果をあげるには至っていない。
  • 放送と通信の融合サービスについては,当初は抵抗感があったが,いまでは「NHKオンデマンド」の事業化など積極的に取り組むようになった。
と指摘した。

しかし,公共放送の価値のNHKによる実現度が08年度には若干下がっており,頭打ちになっていると分析した。そして,NHKの更なる改革のために,「公共性の概念の再構築」「放送産業の特性に合ったPDCA(計画-実行-評価-改善)サイクルの開発・活用」「経営改革の成果の的確な発信」「公平で納得できる受信料体系の確立」「組織の縦割り・横割り問題の解消」などを提起している。

奥田良胤