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英BBC,イギリス型PSB の維持に向けて,パートナーシップ計画を発表

Ofcom(Office of Communications)による公共サービス放送(PSB)レビューの作業が大詰めを迎えた2008年12月11日,BBCは新たなパートナーシップ計画を発表した。イギリスの放送通信分野を規制するOfcomには,イギリスにおけるPSBの維持のための政策提言を政府に行う任務があり,2007年 9月からPSBレビューの議論を開始していた。Ofcomはこれまでの議論や調査から,グローバル化やメディア競争,完全デジタル移行のなかで,受信許可料によるBBCと,商業財源によるITVやチャンネル4,Fiveとによる伝統的なイギリスの公共サービス放送(PSB)という事業モデルに変更が必要であるという認識に立ち,①現行PSBを発展させるために,民放各社に追加資金を投入する,②BBCとチャンネル4が公的資金を財源としてPSBの義務を果たし,ITVとFiveはPSBから除外される,③BBCがPSBの中心事業者となるが,PSBの多元性を維持するため,ITVなど既存のPSB事業者以外からも幅広く公共サービスコンテンツの制作者を募り,公的資金の競争入札を行う,という3つの選択肢を示し,意見の募集を行っていた。なかでも,公共法人が経営するチャンネル4の財源問題は大きな検討課題となっており,チャンネル4救済のために,BBCの商業部門であるBBCワールドワイド社の支配権をチャンネル4に委譲すべきであるという案がOfcom内部で議論されているとの報道もある。

今回のパートナーシップ計画は,公的資金である受信許可料を他者と分け合うことにつながるOfcomの提案に対し,BBCは業界内の提携,パートナーシップによって大きな価値が生まれると主張するもので,その具体策として「制作」「配信」「市場開発」の3つの分野におけるパートナーシップを次のように提案している。

制作

  • 完全デジタル制作への移行を支援するために,業界共有のアーカイブの保存・編集を行うことができる技術開発へ投資する。
  • 地域ニュースを維持するため,BBCの地域ニュース素材をほかの事業者と共有することからはじめ,地域ニュースのインフラ共有への可能性をひらく。

配信

  • BBCのiPlayerの成功を基に,その技術やユーザー体験情報をPSB事業者と共有し,iPlayerをPSB事業者のビデオオンデマンド(VOD)プラットフォームのゲートウェー化する。
  • インターネット接続可能なテレビ環境を関係者らと開発し,テレビを利用したVODサービスを提供する。
  • BBCのウェブサイトのBBC Onlineを質の高いPSB事業者のコンテンツへのガイド役とする。

市場開発

  • 商業活動部門のBBCワールドワイド社によるコンテンツの国際的規模の販売やフォーマット販売能力をPSB事業者と共有し,増収への道をひらく。チャンネル4とはすでに具体的な事業計画の検討を進めている。

Ofcomはこの1月にも,PSBレビューの最終報告書を公表する予定で,政府に対し2010年までにPSBの新たなモデルの採用を迫るとみられている。

中村美子