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放送番組の証拠採用,民放連が抗議

日本民間放送連盟(民放連)は2008年4月8日,「愛知県・長久手立てこもり事件」の初公判で,捜査当局が録画し再編集した民放テレビ局の放送済み番組を,名古屋地裁が証拠採用したことに関して,「改めて強い懸念」を表明した。

この事件は2007年5月に長久手町で,暴力団の元組員が自宅に立てこもり,家族と現場に駆けつけた警察官に拳銃を発砲し,警察官1人が死亡,家族ら3人がけがをしたもの。

事件の初公判が2008年3月24日に名古屋地裁で開かれ,検察側はTBS系列の東海テレビで事件当時放送された『みのもんたの朝ズバッ!』の事件関連部分を録画・再編集した映像を提出し,同地裁は証拠として採用した。

これについて民放連は「取材結果の報道目的以外利用は,取材・報道の自由を制約することにつながりかねない」,「われわれの取材・報道活動は,国民の『知る権利』に応え,真実に肉薄することが目的である。これが捜査当局に安易に利用されることになれば,本来の目的から大きく逸脱する」,「これらの行為が繰り返されることに,改めて強い懸念を表明する」との抗議声明を出し,名古屋地裁と地検に送付した。

放送済み番組の公判への提出,証拠採用に関しては,博多駅で学生と機動隊が衝突したいわゆる「博多駅事件」で,最高裁が「取材の自由も公正な裁判実現のためには制約を受ける」(1969年)との判断を示しているが,放送界は問題が起きるたびに,強く反対しており,裁判所,検察庁との考え方は対立したままである。

奥田良胤