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韓国,「放送通信委員会」が発足

放送及び通信政策を主管する「放送通信委員会」が2月29日,正式に発足した。韓国の国会が2月26日の本会議で,放送委員会と情報通信部を統合する「放送通信委員会設立及び運用に関する法律案」を承認したことによるもので,3月2日,イ・ミョンバク(李明博)大統領は,初代放送通信委員長にチェ・シジュン(崔時仲)氏を内定した。チェ氏はソウル大学政治学科を卒業後,東洋通信を経て,東亜日報政治部長と政治担当論説委員,韓国ギャラップ会長を歴任した人物である。

しかし,統合民主党など野党からは,放送及び通信政策を主管する放送通信委員会の独立性と中立性を保つ観点から,大統領選挙において中心的な役割を果たした現大統領の側近が委員長に就任することに否定的な声も上がっている。

韓国では長年にわたって放送業界・旧放送委員会と情報通信業界・旧情報通信部の対立により,IPTVなどに象徴される放送通信の融合サービスが遅々として進まなかったが,放送通信委員会の発足により,今後は本格的な推進が可能となった。しかしその一方で,従来の放送委員会は独立行政組織であったのに対して,放送通信委員会は大統領直属の組織であり,大統領が放送通信委員長を任命するなど合議制委員会としての性格を排除する形になっていることから,専門家などからは,政治的独立性に疑問の声が出るなど,新たな課題も抱えることになった。

田中則広