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改正放送法が成立

改正放送法(2007年4月・内閣提出)が,第168臨時国会で,衆議院での修正を経て,同年12月21日の参議院本会議で,自民・民主・公明の各会派などの賛成多数で可決・成立した。

改正法は,NHKの職員の不祥事を受けて,NHK経営委員会の監督権限の強化が柱の1つとなっていて,監査委員会の設置や,委員の一部の常勤化などが盛り込まれている。

NHK関連では,このほか,▽過去の放送番組のインターネットによる提供をさらに拡充することや,▽国際放送の外国人向けテレビ放送の拡充と,その業務の一部を子会社に委託すること,それに,▽国際放送に対する「命令放送」を「要請放送」に改め,その対象事項を「邦人の生命,身体,財産の保護や,国の重要政策などに関わるものに限定する」ことが盛り込まれた。

一方,民放関連では,1つの企業が複数の放送局の大株主として経営を行うことを禁じている,マスメディア集中排除原則が緩和され,複数の放送局をグループ経営できる「認定放送持株会社」を認める規定が盛り込まれた。

さらに,NHK,民放ともに,携帯端末向けのデジタル放送「ワンセグ」の独自放送が認められることになった。

当初,改正法では,関西テレビの「発掘!あるある大事典II」で実験データのねつ造が発覚したことなどをきっかけに,いわゆるねつ造番組を放送した放送局に対して,総務相が再発防止計画の策定・提出を求める,新たな行政処分の導入が柱となっていた。

しかし,放送界が,放送内容に対する行政の介入を招きかねないとして,見直しを求めたため,自民・民主の両党などが修正協議を行い,この行政処分の導入は,法律から削除された。これには,先の参議院選挙の結果,衆・参の与野党の勢力が逆転し,「ねじれ国会」となっていることも背景にある。

また,NHK経営委員会の権限強化についても,編集権の自由を守り,経営委員会の過度な関与に一定の歯止めをかけるために,経営委員会の具体的な議決事項が条文に列記されたほか,経営委員が個別の放送番組の編集を行うことを禁止することが,修正によって加わった。

さらに,複数の放送局を傘下に収めることを認める「認定放送持株会社」の制度についても,地方放送局の独自性が損なわれないように,出資比率の上限を,2分の1以下から3分の1未満に引き下げる修正が行われた。

この改正法の成立にあたり,NHKは「放送番組の編集の自由が損なわれることのないよう当初の案が是正されたことは,適切な措置だった」とコメントを発表したほか,民放連の広瀬会長も「民主主義の基盤にかかわるとして,国会が行政処分規定の削除を決断したことに敬意を表する」とのコメントを出した。

改正法にあわせて可決された付帯決議では,放送番組の適正性に関して,「放送倫理・番組向上機構(BPO)の効果的な活動と関係者の不断の取り組みに期待するとともに,政府には,関係者の意向を踏まえつつ,その取り組みに資する環境の整備を検討する」よう求めている。

この法律は,公布から1年以内の政令で定める日から施行される。

藤野優子