メディアフォーカス

総務省研究会,通信・放送法の一本化を提言民放連,新聞協会が反対・懸念を表明

通信・放送融合時代の新たな法体系を検討していた総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(座長・堀部政男一橋大名誉教授)は2007年12月6日,最終報告書を公表した。

同研究会は2007年6月に,放送か通信か,無線か有線かなどで規律している「縦割り型」の現行9法を,ハード・ソフトの分離など機能・サービスによって3つの階層(レイヤー)に分けて規律する「レイヤー型」に転換し,これまで規律のなかったインターネット上の違法・有害情報対策を加えて「情報通信法」(仮称)に一本化すべきとの中間とりまとめを行い,各界から意見を求めていた。これに対して,メディア関係者から,コンテンツへの規律が言論・表現の自由を侵害するおそれがある,規律するメディアとしないメディアを行政が分類するのは公権力の介入につながる,などの意見が出されていた。

最終報告書は,こうした意見に配慮し,「表現の自由の保障」を明記したほか,メディアの分類に関しても「恣意的な運用を排除する」としたが,報告書は概ね中間報告を踏襲する内容となった(中間報告に関しては本誌2007年8月号「メディア・フォーカス」参照)。

最終報告書の概要は以下の通りである。

  • (1) 現行9法を「レイヤー型」に転換して「情報通信法」に一本化し,ネット上の違法・有害情報に規律を加える。事業者がレイヤーを超えて事業参入することは原則自由とする。
  • (2) メディア分類は,「社会的影響力」を基準に判断して3つに分ける。地上波テレビなど「特別メディア」には,現行放送法の規律を適用する。CS放送など「一般メディア」は規律を緩和して,事業への参入を容易にする。インターネットのホームページなどは「オープンメディアコンテンツ」として規律は違法・有害情報にとどめる。
  • (3) 伝送サービスは柔軟で自由な事業展開をはかれるようにするが,公正競争と利用者保護に重点をおく。伝送設備は,通信・放送の区分にとらわれず利用を進めるため,無線局免許制度の見直しなど,制度改革を推進する。
  • (4) 事業者とユーザー間を仲介して電子商取引などを行う「プラットフォーム」については,情報の自由な流通を阻害することがないよう不当な差別的取り扱いを禁止するなどの措置を検討する。

最終報告書に対し,民放連は広瀬道貞会長名で「反対」のコメントを発表した。コメントでは,レイヤーごとの規律に転換する必然性が示されていない,メディアサービスの類型化や審査などは番組内容に対する行政の直接的な関与につながる,と指摘した。また,規制対象がインターネット上の情報に拡大されるため,「違法な情報」対策ですべての人が守るべき規律を定めるのは,憲法の諸原理との整合性や規則の実効性の観点から疑義があると指摘した。

一方,日本新聞協会も阿部雅美メディア開発委員長名の談話を発表し,「懸念」を表明した。談話では,同報告が表現の自由の保障を前提としながらも,依然としてインターネット上のコンテンツ規制や公権力の介入を招きかねない内容を含んでおり,憲法21条が保障する言論・表現の自由が脅かされることを危惧すると指摘した。

奥田良胤