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米国デジタル完全移行まで1年余り業界が周知活動を強化

アメリカでは2009年2月17日の地上アナログ放送終了・デジタル完全移行まで500日を切ったが,APTS(米公共テレビ放送協会)の今年8月の調査では,いまだに国民の51%がデジタル移行について「知らない」と答えている。放送行政を担当するFCC(連邦通信委員会)は早急な対応を求められる一方で,業界団体は独自の広報活動を始めた。

米政府の2005年の調べでは,国内全世帯の19%にあたる2,100万世帯が,地上放送をアンテナで直接受信している。衛星やケーブルに接続せず,デジタル変換コンバーターも設置していない場合,2009年2月のアナログ終了後はテレビが見られなくなる。政府は15億ドル(約1,650億円)の予算を確保し,コンバーター購入用に40ドルのクーポンを1世帯2枚まで補助することを決めている。しかし,FCCはこれまで国民にデジタル移行を知らせる広報活動に500万ドル(約5億5,000万円)しか使っておらず,議会などから不十分だと批判する声が出ている。こうした中,NAB(全米放送事業者協会)では10月15日から,総額7億ドル(約770億円)をかけて広報キャンペーンに乗り出した。加盟局が特番や英語・スペイン語のスポットを流したり,全米各地の家畜品評会やスポーツイベントを地道に回るなど様々な機会をとらえて周知活動を行っている。議会もFCCに対し,地方在住者や高齢者,マイノリティーなどデジタル移行に乗り遅れる可能性のある層への周知強化を要請するなど,アメリカのデジタル変更への取り組みは待ったなしの状況になっている。

柴田 厚