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5,000円以下の簡易チューナー販売を

~情報通信審議会が第4次中間答申~

総務大臣の諮問機関「情報通信審議会」は,2007年8月2日,「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」について,第4次の中間答申を行った。

答申では,(1)中継局の整備,(2)難視聴地域のための補完措置,(3)受信機の普及と利便性の向上などが柱になっている。また今回は,第3次中間答申を受けて,デジタル放送の著作権保護方式の見直しを議論してきた「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の提言についても,あわせて答申が行われた。この両答申のうち,2011年7月のアナログ放送の終了という観点から重要な3つの項目について具体的に見ていきたい。

1つは,地上デジタル放送の受信機の普及の問題である。今年3月に総務省が実施した調査によると,デジタル放送受信機の世帯普及率は27.8%。しかも,まだ受信機を購入していない人に購入予定をたずねた結果,「今のテレビが故障したら購入する」,「受信機が安くなったら購入する」と答えた人が多く,2011年以降も今のアナログ受信機を使い続けたいと考える人が多い。こうした現状を踏まえて,答申では,アナログ受信機に取り付けるとデジタル放送を視聴できる,最小限の機能の簡易チューナーを,2年以内に5,000円以下で入手できる環境を整えるよう関係業界に求めた。

また,経済的な理由で地上デジタル放送が視聴できなくなることが見込まれる低所得世帯などに対する具体的な支援策を,来年夏までに公表するよう国に求めた。これを受けて,国は,デジタル放送を受信するチューナーを無料で配るなどの支援策を来年6月までに検討することを明らかにした。

2つめの問題は,2011年時点で,デジタル放送を視聴できない難視聴地域への対策である。答申では,こうした難視聴地域が発生しないように,地上系のネットワークが整備されるまでの当面の間,緊急避難的な措置として,衛星を使ったセーフティネットを早急に検討するよう国などに求めた。今後,BSとCS のどちらを活用するかといった問題や,ランニングコストなどの経費を誰が負担するのかといった課題について調整が行われる。

3つめは,デジタル放送の録画制限の緩和の問題である。現状では,複製を禁じるために1回のコピーしか認められていないが,利用者の利便性や,デジタル受信機の普及の足かせとなるのを防ぐ点から,答申では,規制を緩和して,9回までコピーできる新しいルールを打ち出した。9回の根拠は,1人が,家庭用の DVD, iPodなどのポータブルプレーヤー,携帯電話と,3回コピーすると考えて,それに1世帯の視聴者数3人をかけている。ただし,今回の制限の緩和は,あくまでも私的複製に限ることが前提であり,無断販売などの違法行為が生じた場合などは,市場の動向を踏まえて随時新たなルールに見直していくと明記した。

アナログ放送の終了まで残り4年を切った。総務省は,地上放送のデジタル化を完了するための最終段階に入ったとして,来年度からの4年間で総額500億円をかけて,環境整備を進めるとしているが,実質的な完全デジタル化までは,急ピッチでクリアすべき課題が数多く残されている。

藤野優子