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東京MXがYouTubeと提携し,専用ブランドページを開設

7月12日,東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)は,米Googleと契約を締結し,動画共有サイト「YouTube」内にニュース番組などを配信する専用ページを開いた。東京MXは,今後順次番組の配信を強化して利用者を拡大するとともに,広告による新たな収益源に育てることを目指している。

開設以来ずっと英語版だけだったYouTubeは,この6月に日本語を含め9つの各国版サイトを開設したばかり。日本の地上波テレビ局が,YouTubeに専用ページを開いて本格的に番組配信するのは初めてのことである。

実際にYouTubeにアクセスし「パートナー」のページに進むと,「BBC」や「CBS」など海外の著名な放送局や映画会社などと並んで「tokyomx」のロゴとアイコンがリストアップされている。それをクリックすると,東京MXブランドの専用ページに入って,ニュースやトークバラエティ番組などを見ることができる仕組みとなっている。

そもそも,YouTubeは,動画コンテンツを広く一般に公開できる場を提供して爆発的な人気を集めたウェブサイトである。特に日本では,ユーザーが私的に録画したテレビ番組から,面白いシーンや「お宝映像」をピックアップして投稿。それがネット掲示板やブログで話題を呼び,わずか1年余りで,非重複利用者数がひと月1,000万人の大台を突破するという前代未聞の成長ぶりを示した。

しかし,実質的に匿名で投稿できる一般ユーザーが,録画したテレビ番組をネットにアップするのに著作権処理などしているはずもない。テレビ局をはじめとする著作権者にとって,違法映像の公開を煽って人気を集めるYouTubeは,いわば不惧戴天の敵であった。しかし,全世界に広がった熱狂的な支持を目の当たりにして,英米の有力メディアは,次々とYouTubeとの提携に大きく舵を切るようになる。ただ,番組著作権が入り組んだ日本のテレビ局・著作権団体は,今も一貫してYouTubeへの対決姿勢を取り続けている。

そんな中,東京MXは,既に1年前から,YouTubeを介した番組のネット配信を開始していた。ただし,一般ユーザーとして番組を1本公開していただけであり,提携というにはまだ程遠かった。それだけに,今回,東京MXが正式にYouTubeと契約して専用ブランドページを開設したことは,日本のテレビ局が番組のウェブ配信に向けて踏み出した新たな一歩と言えよう。

これに続く8月初旬,YouTubeは,吉本興業やミクシィなど,日本の有力企業数社との提携を発表した。ここへきて,ネットの巨人 Google=YouTubeが日本に向けて仕掛ける矢継ぎばやの積極姿勢は,動画コンテンツの有力市場である日本をいかに重要視しているかの現れであろう。

同時にYouTubeは,違法映像の認識・削除システムを早期に導入することも明言した。こうした流れは,Viacomからの巨額訴訟への対抗手段という意味合いが強いとはいえ,これまで著作権を軽視してきたYouTubeの新たな方向性を示すものといえる。著作権を適正に処理した上で,番組・動画コンテンツを積極的にネットで配信するという流れは,今後ますます強まっていくだろう。

四方康嗣