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スポット広告のネット募集 電通,衛星放送局に拡大

大手広告代理店・電通は,2006年秋から,日本で初めてインターネットを使ってテレビのスポット広告を募集していたが,一定の成果をあげたことから,2007年5月28日から衛星放送局にも対象を拡げた。

テレビのCMは制作費が高いうえ,スポット枠がとりにくいこともあって,一般企業にとってはCMを出したくても簡単には出せないのが実態となっていた。

このため,電通はCM募集からCM制作,さらに放送枠の決定までをすべてネット経由で簡単にできるようにし,これまでテレビ広告にあまり縁がなかった新たな広告主の開拓をめざし,新システムを導入した。

このシステムは「CMGOGO(CMゴーゴー)」と名付けられ,CMを希望する企業はインターネットで放送地域,期間,回数を指定して申し込み,約50 種のCMライブラリーの中から好みの素材を選んで企業ロゴや商品名,メッセージを登録すると,電通が登録内容をもとに,スポットCMを完成させ,放送する仕組みとなっている。

全国127の民放局が参加したが,CM料金はたとえば関東地区の場合,15日間で10 回のCM放送(15秒)で525万円であった。

「CMゴーゴー」は半年間の期間限定で試験的に行われたが,新たな広告主の確保など一定の成果をあげた。また広告主からも地上波放送局以外にも対象を拡大してほしいとの要望があったため,電通は地上波での試験サービスをさらに充実させて継続するとともに,対象を衛星放送局に拡大し,2007年5月28日から受付けを開始した。

地上放送のサービスでは,これまでは広告主が告知したい商品やサービスをネットに登録する際に「文章」「画像」による申し込みだけを受付けていたが,今後は「動画」の受付けも行うこととなった。また,深夜枠に限定してスポット枠を買うこともできるようにした。

衛星放送局を対象にしたスポット広告の募集には,BS 放送局とCS 放送局あわせて60局が参加している。申し込みシステムは地上波と同じだが,広告主が用意したCM 素材を使うこともできるようになっている。また,CS放送は多チャンネルであるところから,広告主は音楽やスポーツ,ニュース等多様なジャンルから希望のジャンルを選んでCM を放送できるようになっている。

ちなみに,CM の長さは30 秒が基本で,地上放送と違って全国一律に放送されるが,料金はBS 放送で7日間10 回放送の場合が131万2,500 円,CS放送の場合は7日間10 回で42万円から78万7,500円となっている。CS放送の場合はCMを放送するジャンルによって料金が異なる。

テレビのCM取引に関しては2005年11月に公正取引委員会が実態調査の結果を公表し,そのなかでスポット広告について透明性を高める必要があると指摘しているが,インターネットを使ってのCM募集は一般企業のCM取引への参加に途を拓いたものとして注目された。電通では,今後放送だけでなく,新聞社・出版社・放送局とともにインターネットを使った広告申し込みシステムについて検討をすすめ,試験サービスの範囲を拡大したいとしている。

奥田良胤