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「ねつ造」再発防止へ自律機能を強化 BPOに「放送倫理検証委員会」

放送倫理の確立と「ねつ造」等の再発防止を目的として第三者機関である「放送倫理・番組向上機構」(BPO)は,調査権限を持った「放送倫理検証委員会」を2007年5月12日にスタートさせた。

「放送倫理検証委員会」は,関西テレビ『発掘! あるある大事典II』の「ねつ造」問題が明るみに出て世論の厳しい批判を受け,国会に上程された放送法改正案には「ねつ造」番組を放送した放送局に再発防止計画の提出を求める新たな行政処分が盛り込まれる等公権力の放送規制が顕著になった。このため,放送界が公的規制を避けようと急きょ自主的な取り組みとして発足させた。

検証委員会は,BPOにある「放送番組委員会」を発展的に解消して設置された。「放送番組委員会」には放送局からも委員が参加していたが,検証委員会は公平性を担保するため,10人の委員はすべて放送界以外から選任され,弁護士の川端和治氏が委員長に就任した。

検証委員会は,番組内容に虚偽部分があり,視聴者に著しい誤解を与えた疑いがあると委員会が判断した場合,すみやかに放送局に報告・説明を求め審理を開始する。審理対象には,委員会が判断したものの他,放送局から申し出のあったもの,視聴者,専門家等から指摘のあったもの,新聞等で報道されたものも含まれる。

委員会は,番組テープ等審理に必要な資料の提出を放送局に求め,審理結果を「勧告」あるいは「見解」として放送局に伝えるとともに,公表する。

複雑な事案に関しては,特別調査チームを設置して,関係者からの聞き取り調査等を行う。また,調査が膨大になる場合には,放送局に外部委員で構成する調査委員会を設置するように勧告する。これは,BPOの調査態勢に限界があるためで,当該放送局に経費も含めた調査の責任を負わせる。

審理結果は,「勧告」あるいは「見解」として公表されるが,当該放送局はしかるべき時間で,その内容を放送しなければならない。審理の結果,「勧告」された放送局は1か月以内に「再発防止策」を提出しなければならず,検証委員会はその実施状況を検証する権限を持つ。

「ねつ造」等の問題については,当該放送局の協力がなければ,実効ある調査は困難である。このため,BPOは各放送局と個別に協力合意書を取り交わし,下請けの制作会社に対する調査もできるようにする。

検証委員会の機能は,放送法改正案に盛り込まれた内容より厳しくなっており,民放連の広瀬道貞会長は「合意書に従わなかったり,審理結果がひどかったりした場合は,会員資格停止や除名につながる」と自律機能を強調した。背景には放送法改正案に盛り込まれた法による規制をできるだけ避けたいとの放送界の強い思いがある。

5月15日には,2007年1月22日放送のTBS制作『みのもんたの朝ズバッ!』の不二家の不祥事に関する報道について調査・審理を求めたいと有識者から申立てがあった。検証委員会は6月の委員会で審理入りするかどうかを決める。この番組に関してTBSはすでに「誤解を招きかねない表現があった」と同番組内で謝罪している。

奥田良胤