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『あるある』ねつ造問題 民放連,関西テレビの除名決める

民放連は2007年3月27日,『発掘! あるある大事典Ⅱ』のねつ造問題に関する緊急対策会議を開き,会員活動停止処分をさらに進めて関西テレビを除名する方針を決めた。4月19日の総会で正式決定される。

民放連から除名されると,民放連が一括して行っている著作権処理を単独で行う必要が出てくるほか,番組送信の回線料割引が受けられなくなるなど経営に大きな影響が出る。番組に関しての不祥事で,除名になるのは初めてのケースである。

『発掘! あるある大事典Ⅱ』のねつ造問題に関しては,関西テレビが2 月7 日に調査報告書を総務省に提出したが,総務省は孫受け制作会社に責任を押し付けており原因究明が不十分だとして,報告書を再度提出するように求めた。これに対し関西テレビは2 月28 日に再報告書を提出。現場を監督する部長,局長レベルでもねつ造防止策の基準を設けておらず,最終的には社長に責任があるとの見解を表明した。

この番組については,1月7 日放送分だけでなく,過去にも海外研究者のコメントのねつ造やデータの改ざんがあったとの疑惑が浮かび,関西テレビでは社外有識者による調査委員会(委員長・熊崎勝彦弁護士)を設置して調査を行った。

調査委員会は,3月23 日に調査結果を発表した。それによると,この番組では1 月7日放送分も含めて8 件のデータの改ざん等ねつ造があり,それ以外に不適切な表現が8 件あったことが判明した。調査委員会は,事実のねつ造やデータの改ざんに関して制作担当者が倫理観を失っていた,と指摘した。

調査委員会の発表に際して,関西テレビは記者会見を行わず,この段階になっても経営責任を明確にしなかった。

関西テレビの対応は,2007年1月にこの問題が明るみに出て以降,後手後手に回り,自民党が放送法改正案に「ねつ造」問題に関して,再発防止計画の提出を放送局に求める新たな行政指導を盛り込む方針を決める大きな原因となった。

総務省の対応に,表現の自由への危機感を抱く民放連には,自浄機能を強調することによって公権力による放送への規制を避けようとの判断が強く働いた。3月 7日にNHKと共同で,問題が起きた場合に審理し改善勧告等を行う権限を持つ第三者委員会を「放送倫理・番組向上機構」(BPO)に設置することを発表した。

しかし,関西テレビが3月23日の外部有識者による調査結果の発表のあとも経営責任を明確にしない事態に,民放連は一段と危機感を募らせたものとみられ,関西テレビの除名という厳しい処分に踏み切った。

関西テレビは,3月28日に『発掘!あるある大事典Ⅱ』に関するねつ造問題に関して,放送法に基づく訂正放送を行い,謝罪した。放送は午後10時から15 分間フジテレビ系の全国ネットで行われ,8件についてねつ造があったことを報告したほか,8件についても演出上の問題や改善すべき点があることを認めた。

総務省は3月30日に,関西テレビに行政指導では最も重い「警告」を行い,再発防止策を提出するように求めた。

奥田良胤