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仏,衛星を利用したネットワーク構築で携帯端末向け放送規格の開発へ

携帯機器でテレビ放送を受信可能にする技術には現在,複数の規格が存在する。「ワンセグ」で知られ,日本で商用化されているISDB-T方式,イタリアなどで商用化されているDVB-H方式などである。韓国では2005年に,地上のT-DMB方式と,衛星を利用するS-DMB方式が商用化された。

フランスでは,携帯端末向け放送の将来の世界標準規格を作るべく,衛星を利用した技術の開発に国家的な支援が行われている。これは,地上デジタルの DVB-H方式と,Sバンドを使った衛星デジタル放送規格とを組み合わせたDVB-SH方式(DVB-SSP方式とも)で,開発を主導している通信システム会社アルカテル(フランス)が2006年11月,受信実験に成功した。同社と携帯電話会社,端末メーカー等による共同の研究開発プロジェクト「Unlimited Mobile TV Solution」に対し,フランス政府は,産業革新機構(Agence de l'Innovation Industrielle,AII)を通じて,3,800万ユーロ(約56億円)を拠出している。

アルカテルは2006年12月,アメリカの通信設備会社ルーセント・テクノロジーと合併し,アルカテル・ルーセント(本社パリ)となった。同社の関連会社は,携帯端末向け放送に用いるSバンド(2.2GHz帯)トランスポンダ搭載のW2A衛星の設計と製造を請け負い,対応する地上ネットワークの構築にも今年から着手している。W2A衛星については,フランスの衛星事業者ユーテルサットが,2009年に打ち上げ,SESグローバル社と合弁会社を設立して,運営にあたる計画である。

伊藤 文