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公取委,CM契約に入札制などを提言

~広告業界の取引実態調査~

公正取引委員会は,2005年11月8日に「広告業界の取引実態に関する調査報告書」を公表した。この調査は,広告業界での公正な取引を推進する等のために行われたもので,テレビ局や新聞社,広告会社など441社に対するアンケートと46社へのヒアリング調査によって実施された。

報告書によれば,2004年の総広告費は5兆8,571億円で,このうちテレビは34.9%。総広告費のうち大手広告会社3社が占める割合が48.0% で,大手と中小に二極化している。テレビ界ではこの傾向が一段と強くテレビ広告費のうち大手3社の占める割合は65.2%に達している。

テレビ局の「番組CM」に関しては,大手がCM枠の大部分をあらかじめ確保している。広告主が入れ替わるときが中小にとって新規参入のチャンスだが,テレビ局による情報開示が少なく,中小は入れ替わり情報をキャッチするのが難しい。さらに既存の広告主が優先される原則がある。広告会社は既存の広告主に対してCM枠の事前セールスを行っており,実績の有無にかかわらずより高い番組提供料を提示した広告主を優先するとしたテレビ局は1割以下であった。こうしたことから新たな広告会社や広告主が取引に参入することは極めて困難な実態となっている。

「スポットCM」の広告会社への報酬は,基本報酬と特別報酬の二本立てで,基本報酬はテレビ局に支払われるCM料金の15~20%,プラスαとして支払われる特別報酬は0~15%である。このため広告会社による報酬格差は最大20%にもなる。したがって,最低限の基本報酬しか得ることができない中小は,広告主への値引き競争でも不利となっている。

取引の契約形式をみると,「番組CM」に関して「ほとんどの取引において書面で発注」と回答した広告会社は56.3%に過ぎず,口頭による取引が多いことが市場メカニズムを働きにくくしている。

一方1番組を複数の広告主が提供している場合,1社当たりのCM料金は高い社と安い社の間に2倍程度の開きがあるが,他社の出しているCM料金を知らないと答えた社が72.5%にのぼり,広告の効果やコストに関する広告主の意識は必ずしも高くないことが明らかになった。

インターネット広告においては,いまのところ不透明な取引慣行は認められていない。

こうした調査結果をふまえ公取委は,

  • (1) CM販売対象枠について番組改変期の一定期間前に公表する
  • (2) 番組CM枠の価格表を明らかにする
  • (3) 番組CM枠について広告会社による入札方法の導入を検討する
  • (4) スポット広告について,テレビ局は報酬決定についての合理性,公平性,透明性を確保する
  • (5) 取引条件等を記載した書面による取引の普及など取引方式を改善する
  • (6) 広告主は広告会社の選定・変更について,広告効果やコスト面での成果を反映させる
  • (7) インターネット広告取引では,競争阻害的な取引慣行が出現しないようにする

,との提言を行った。

公取委が,広告業界の取引実態に関する調査を行ったのは1979年以来26年ぶりのことだが,当時は単なる実態調査であり,今回のように調査結果に基づいて提言したのは初めてのことである。

奥田良胤