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地デジ放送開始1周年,本格普及へ向け第5次行動計画策定

放送事業者やメーカー,地方公共団体,消費者団体,総務省など, デジタル放送に携わる各界の関係者が,官民一体となったオールジャパン 体制で普及を推進する「地上デジタル推進全国会議」は,関東,中京, 近畿の3大広域圏で地上デジタル放送がスタートして1周年を迎えた 2004年12月1日,およそ800人が出席して第3回総会を開き,それぞれが 取り組むべき指針を示した「デジタル放送推進のための行動計画」 (第5次)を決定した。

第5次行動計画では,地上デジタル放送の普及促進を図るための 基本方針として,「『視聴者の理解・利活用の推進・早期エリア拡大』 による『全国普及の加速』」と,デジタル放送への完全移行 (アナログ放送終了)期限である「2011年から逆算したスケジュールの 明確化による確実な全面移行実現」の2つを掲げた。そして,全国普及を 加速させるポイントとして,①視聴者の認知と理解,②放送エリアの 早期拡大,③低廉・多様な受信機の普及,④高度サービスの 開発・普及・促進,が不可欠であるとした。さらに,完全移行に向けては, 2011年から逆算した取り組むべき事項やスケジュール等の明確化と, 放送事業者やメーカーなど関係者それぞれの取り組みの有機的な連携により, 周知・広報活動を効果的に推進できる体制を整備することを挙げた。

今回,新たに各関係事業者が推進する取り組み策として,地上放送 事業者に対しては,地上デジタル放送の特長の1つである高画質・高音質の 放送の魅力を視聴者に伝える機会を増やすため,映像の撮影から編集まで 番組制作すべてをハイビジョンで行うピュアハイビジョン番組の放送時間の 比率を高めることが求められた。具体的には2005年度中を目途に,NHK総合が全日 (6時~24時)の90%以上,NHK教育と民放広域局が全日の50%以上もしくは プライムタイム(19時~23時)の60%以上となるよう最大限努力することとなった。

一方,メーカーに対しては,大画面の薄型テレビが主流となっている 現状を踏まえ,視聴者の選択肢の拡大を図る狙いで,受信機の多様化, 低廉化を進めること,具体的には10インチクラスの小型テレビへの地上 デジタル放送用チューナーの搭載や,2006年末を目途に車載用端末を開発する ことなどが求められた。

電子情報技術産業協会がまとめた地上デジタル放送用テレビなど受信 機器の出荷状況によると,11月末までの累計が約183万台で,普及の スピードはBSデジタル放送(約89万台)に比べ倍のペースとなっている。 しかし,全国に1億2,000万台と推計されるアナログテレビの1.3%に過ぎず, また,1年間のテレビ国内出荷台数が1,000万台前後にとどまることから, 完全移行期限までの約6年半にすべてデジタルテレビに置き換えるためには, 極めて高いハードルを越えなければならない。

全国会議では,関係者一体となった取り組みを効果的に推進するため, 幹事会の下に,活動方針の検討や行動計画全体のフォローアップを行う 「企画運営分科会」と,受信機の普及策やサービスのあり方など検討する 「普及促進分科会」を設置した。普及促進分科会は,放送自体のPRから 普及の加速を図る第2段階の活動へ進むことから,放送事業者に加え, メーカーや販売店,地方公共団体など幅広い業界の42人で構成されている。

東郷 荘司