国内放送事情

巨大津波災害の切迫性と警報改訂

~どう変わる市町村・メディアの情報伝達~

東日本大震災後、巨大地震・津波の想定が強化され、2013年3月には津波警報が改訂された。改訂では、巨大地震の恐れがある場合には、津波の予想高さの第1報は、「巨大」と定性的表現で発表される。巨大津波災害の切迫性を、自治体と放送メディアはどのように伝えようとしているのだろうか。

予想高さの「巨大」という表現にはインパクトがあるが、仙台市は、東日本大震災で住民の多くがすぐに逃げなかった経験から、須崎市は、南海トラフ巨大地震で、短時間に高い津波が襲来すると想定されていることから、「巨大」の表現を防災行政無線などによる避難の呼びかけで使う。一方、津波の警報が出ることが比較的多い岩手県沿岸の釜石市では、「巨大」が「オオカミ少年」にならないようにとの配慮もあり、「巨大」を「非常に高い津波」と言い換えて避難を呼びかける。

警報の表現以外に、「○○すること」「○○せよ」と言った命令調は、仙台市、釜石市で使う。命令調を使うタイミングは仙台市では初動時から、釜石市では津波が堤防を超えそうな切迫した状況からと異なっている。

放送メディアの避難呼びかけでは、NHKはテレビの速報画面で「すぐ にげて!」などの大型字幕を出すほか、「○○すること」の命令調や「東日本大震災を思い出して下さい」といった強い口調を使う。IBC岩手放送はラジオで命令調や強い口調は使わないが、例外として「東日本大震災を思い出して下さい」と呼びかける。

震災の経験とその受け止め方、巨大津波災害の想定と対応の違いによって、切迫性の伝え方に差異が生じている。

メディア研究部 福長秀彦