国内放送事情

調査研究ノート

「これからのテレビ」を巡る動向を整理する

~2012年の取り組み・議論を中心に~

「新しいテレビ」「未来のテレビ」「次世代テレビ」など,最近のテレビを巡る取組みや議論にはこうした枕ことばが目立つ。2012 年は特に,完全地上デジタル化後の次なるステージを切り開くという意図が込められたためか,この傾向はより顕著であった。その多くはインターネットの社会基盤化を前提とした通信との連携によるものだが,何が新しく,何が未来を示し,何が次世代であるかについて,イメージは必ずしも一致していなかった。

一方で,「テレビが終わる」「チャンネルが消える」「テレビから次世代メディアへ」という言説も散見されている。放送事業者が既得権益の下で構築してきたビジネスモデルがいかに閉鎖的で時代にそぐわないものであるか,という批判に基づくものも目立つが,そこには現時点では顕在化・言語化しにくい,テレビ,映像コンテンツに対するユーザーのニーズを先読みする試みも存在した。

肯定的か否定的かはともかく,「これからのテレビ」に向けた取組みや議論が今後も活況を呈し,混迷を伴いながら進んでいくことだけは間違いないであろう。激変する「これからのテレビ」を巡る2012年の動向を俯瞰する。

メディア研究部 村上圭子