国内放送事情

「震災ビッグデータ」をどう生かすか

~災害情報の今後を展望する~

デジタル化やクラウド化の進展に伴い、既存の技術では管理することが困難な大量で多様なデータ、いわゆるビッグデータが生成・流通・蓄積される環境が急速に整ってきている。具体的には、SNSの書き込みやウェブサイトのアクセスログ、携帯電話やスマートフォンのGPS情報などがあげられるが、東日本大震災後、このビッグデータを災害時に活用しようという動きが強まっている。こうした状況を受け、グーグルとツイッター・ジャパン社が呼びかけ、2012年9月初旬から1か月半、 『東日本大震災ビッグデータワークショップ』が行われ、研究者や技術者、メディア関係者、学生など500人以上が参加した。ワークショップでは、ビッグデータをどのように活用すれば人命救援や物資支援につながるか、研究成果などが報告された。中には、GPS情報など を用いた主要ターミナル駅周辺の避難誘導シミュレーションや、ツイッターでデマ拡散を防ぐためのシステムなど具体的な提案もあった。NHKは、データの提供者、分析者の両方の立場で参加し、災害報道をツイートデータによって補完するシステムの提案などを行った。本稿では、まず、新たに誕生してきた“震災ビッグデータ”という存在が、災害情報の議論や政策の中でどのように位置付けられているのかを確認する。その上で、ワークショップの報告をきっかけに、ビッグデータが今後の災害情報にどのような進化をもたらすのか展望する。

メディア研究部 村上圭子