国内放送事情

番組調和原則 法改正で問い直される機能

~制度化の理念と運用の実態~

2010年11月に成立した改正放送法には、新たに、番組調和原則の運用状況の公表を放送事業者に義務づける規定が盛り込まれた。番組調和原則は、放送事業者(地上テレビや一部のBS放送など)に対して、「教養、教育、報道、娯楽」といった番組を設け、調和が取れた編成を求めるものだが、これまでどのように運用されていたのか不透明な部分が多かった。本稿では、総務省が開示した資料に基づいて、運用の実態を分析するとともに、今回の法改正がどのような意味を持ち、今後どういった議論が求められるか、考察を行った。

番組調和原則は、1950年代の低俗番組批判を背景に、1959年の放送法改正で追加されたもので、テレビ局の免許(再免許)の際に、番組ごとに「教育」や「教養」といった種別を付した放送番組表の提出を求め、行政当局が審査するという方法で運用が行われてきた。しかし、それぞれの種別に番組を明確に分類することがそもそも困難であり、放送事業者が番組の種別を公表する必要がなかったこともあって、番組調和原則の運用は必ずしも実態を反映しないものになっていった。

情報公開法に基づいて総務省が開示した資料からは、「教育番組10%以上、教養番組20%以上」といった免許時の条件に適合するよう、通販番組を「教養」に分類したり、ドラマやバラエティ番組を「教育」に分類したりするケースがあることがわかり、総合編成のメディアを維持するという番組調和原則の理念と運用実態との間に乖離があることが明らかになった。

今回の法改正は、放送事業者に番組種別の公表を求めることを通じて、通販番組の増加を牽制しようというねらいを持ったものだが、改正に至る過程で、番組調和原則の理念に関わる議論、つまり、多メディア化の中で総合編成のメディアをどう維持していくかといった問題や、「教育番組10%以上」といった条件を設ける制度運用のあり方が適切かといった問題について、十分に検討が行われたとは言い難い。本稿では、番組調和原則の運用の実態を踏まえつつ、今後どのような議論が求められるか考察を行った。

メディア研究部(メディア動向)村上聖一