国内放送事情

シリーズ“融合”時代 放送メディアの課題と可能性③

テレビの“広告力”の現在値

~広告動向に見るテレビの構造変化~

1年間に国内で使われた広告費の推計を見ると、2008年1月-12月のテレビ広告費は前年比4.4%の減少となった。そして今年に入っても減少幅は拡大を続けている。一見すると、今回の広告費減少は昨年秋からの世界的な景気後退によるものにも見えるが、景気後退以外の構造的要因を示す指標も散見されている。広告媒体としてのテレビの媒体力は落ちたのだろうか。広告主と視聴者は、それぞれの媒体をどう評価しているのか。媒体ごとの利用動向を探ることで、放送メディアの構造がどう変化しているのかを探る。

電通のテレビ広告の月次売上高は、2月-16.9%、4月-17.5%、5月-13.8%と、前年同期比二桁のマイナスが続き、テレビ広告離れの動きは加速しているように見える。民放キー局各社の決算でも、本業の儲けを示す単体の営業利益が軒並み大幅減益となり、収入の屋台骨である広告収入、特にスポット広告収入が大幅に減っている。

本格的な通信・放送融合時代の到来を受けてNHK放送文化研究所が2009年1月に実施した日本人とメディアに関する世論調査や、3月に実施した広告主企業に対する広告出稿に関する調査、同じく3月に実施した視聴者へのネット調査の結果から、広告媒体としてのテレビの媒体力を分析する。

急速な景気後退で経費を切り詰めるようになった広告主企業は、費用対効果を厳しく追求し、効果測定のしやすいネット広告へのシフトを強めているように見える。広告主はどのように媒体を使い分けているのか。一方の消費者は、どのように広告媒体を見ているのか。それぞれの媒体ごとの利用動向を分析することで、テレビが持つ媒体特性を見極める。そして、テレビ広告離れを食い止めるために、今何が求められているのかを探る。

メディア研究部(メディア動向)小川 浩司