国内放送事情

「調査報道」の社会史

~第4回 「調査報道」を阻む壁~

これまで、「調査報道」の言説史(第1回)や調査報道には、一般的な独自の報道を行なう「調査報道」と権力・権威を取材対象とした「特別調査報道」がある(第2回)ことを提示してきた。さらに「特別調査報道」の具体的事例とその社会的影響についても検証(第3回)してきた。

今回は、「調査報道」を遂行するうえで障壁となる事項がどのようなものか、現場の記者、デスク、部長、編集主幹経験者の意見を踏まえながら検討を試みた。その結果、概ね以下の10項目に亘ることがわかった。①取材現場のゆとりのなさ、②デスクの「調査報道」に対するマインドの欠如、③若い記者たちの取材力不足と問題意識の欠如、④取材ノウハウの継承の難しさ、⑤記者クラブ中心の取材体制、⑥報道機関の経営難、⑦個人情報の取材を阻む社会的傾向、⑧メディアに厳しい司法の傾向、⑨権力側の対抗措置、⑩「調査報道」受け入れ体質の欠如-こうした項目を一つひとつ検証してみた。また「調査報道」でこれまで訴訟になった事例として「TBS 対 讀賣新聞」と「テレビ朝日のダイオキシン報道」と取り上げるとともに、「ロス疑惑」で知られる三浦報道についても「調査報道」との関わりからどこに問題があったのかを考察した。

メディア研究部 小俣 一平