国内放送事情

調査研究ノート

多文化社会における放送の役割に関する調査・研究に向けて

いま、日本で結婚するカップルの16組に1組は国際結婚である。都市部ではこの割合はさらに高く、例えば東京や大阪、名古屋ではほぼ10組に1組が国際結婚だという。背景には経済や社会のグローバリゼーションの進展がある。国内在住の外国人が増加する中、日本にも欧米並みの「多文化社会化」状況が早晩到来するだろうという見方はもはや一般的なものになりつつある。

しかし日本の放送業界は一部の例外を除けば、極めてドメスティックで同質的な産業構造、制度、サービス形態を保持し続けてきた。「多文化社会化」は今後、放送業界の産業構造や放送事業のあり方に大きな変化をもたらす可能性がある。そしてその場合、これまでとは異なる理念に基づく新たな放送のあり方を構想していく必要がある。

本稿では、こうした問題意識に基づき、いくつかの先行研究や調査をレビューしながら、多文化社会化という状況に放送がどう向き合っていくべきか、今後放送業界や放送サービスはどう変わっていくべきかについて考察する。

メディア研究部(海外メディア)米倉 律