国内放送事情

「日本人とメディア」総合調査研究報告④

多チャンネル化の中の地域情報サービス

~鳥取県米子市の事例研究から~

文研では、「日本人とメディア」総合調査研究の一環として、多チャンネルサービスの中での地域情報や番組へのニーズ・利用実態を探るため、鳥取県米子市のケーブルテレビ会社中海テレビ放送の協力を得て、契約者に対するアンケート調査とヒアリングを行った。

米子市は山陰地方第3の都市だが、地元放送局や新聞社などの既存メディアは、山陰地方全体をカバーするため、米子市民の地元に特化した情報ニーズに十分に応じることは難しく、地域情報のエアポケットのような状況が生まれている。その中で、中海テレビ放送では地域情報サービスに力を入れ、全国でも稀な6つの自主放送チャンネルサービスを行っている。

調査では、ケーブルテレビ契約者の3分の2にあたる人たちが、週に1回以上、中海テレビ放送のいずれかの自主放送チャンネルに接していることがわかった。とくに地域密着・生活情報番組を放送する「中海4チャンネル」と地元ニュース専門チャンネル「コムコムスタジオ」は、いずれも半数以上の人が「週に1 回以上」接していた。また、「地元の放送局という感じがする」「地域の情報を細かく伝えている」イメージのあるチャンネルとして、中海テレビ放送を挙げる人も4割以上にのぼった。

その一方で、いくつかの課題も浮かび上がった。まず、地域メディアとして見た場合の住民の利用度である。中海テレビの契約者は米子市内だけでも半数にとどまっており、さらに契約者の中でも3分の1は、中海テレビの自主放送チャンネルを活用していない。今後、普及がどのくらい伸びるかが大きな課題である。さらに、放送の内容に関する課題もある。「内容のマンネリ化」や繰り返しの多さを批判的に語る人が少なくなく、今以上の「内容の充実」が求められている。

中海テレビ放送の例は、全国的にみれば特殊で、単純に応用できる例ではないかもしれないが、多チャンネル化が可能となるデジタル時代の地域情報サービスを考えるうえでのヒントも多く含まれているのではないかと考える。

専任研究員 菅中雄一郎/担当部長 原 由美子