国内放送事情

表現メディアとして展開するケータイ

~ケータイ小説流行の背景を探る~

普及台数1億を超えた携帯電話、いわゆるケータイ。その浸透が急激に進む10代、20代の主として女性の間で、いま「ケータイ小説」が爆発的に流行している。「作家」がインターネットのサイトに掲載した小説を、「読者」が好きなときにケータイからアクセスして読み、付属する掲示板に感想を書き込んで作家と交流する。評判は「口コミ」を通じてあっという間に広がり、1日に1万人に読まれる小説も現れ、出版社が書籍化すると軒並み10数万部、中には 100万部を超えるベストセラーが生まれる。ケータイ小説は活字離れの進む10代、20代の読者層を掘り起こし、不況が続く出版界に異変をもたらしたのである。

その背景として第1にiモードサービスの開始、50万文字もの文章を書きこめるBOOK機能がケータイサイトに加わったこと、ケータイ端末の高速通信化とパケット定額制などインフラが整備されたことがあげられる。これに漢字変換や言葉のリード機能の充実が加わって、もともと本を読むのも文章を書くのも苦手な普通の若者たちが、メールやチャットの延長のような普段着のスタイルで、自分の体験に基づく恋愛小説書き始めた。これが、やはり読書は苦手だがケータイでのコミュニケーションには馴染んでいる中高生の共感を集め、ネット上にコミュニティーが形成されてゆく・・・

ケータイ小説サイトと出版社のプロデューサー、作家たちへの聞き取りを交えて、ケータイ小説流行の背景を探り、ケータイが、ユーザーが自らコンテンツを作り不特定多数に発信する、「表現のためのメディア」として使われ始めた現在を考察する。

主任研究員 七沢 潔