国内放送事情

連続インタビュー 動くか、日本の映像コンテンツ③

「コンテンツなんて言葉は、大嫌いだ。」

スタジオジブリ社長・鈴木敏夫氏

『もののけ姫』(1997年)『千と千尋の神隠し』(2001年)『ハウルの動く城』(2004年)など、日本映画史上に残るメガヒットを連発し、海外でも高い評価を受ける宮崎駿監督とスタジオジブリのアニメーション映画。コンテンツ産業の振興と日本文化の世界への発信をめざす政府は「これぞ日本を代表するコンテンツ」と持ち上げ、財界からは投資の申し込みが相次ぎ、ネット業界はコンテンツの配信を求めて殺到する。だがスタジオジブリ社長の鈴木敏夫氏は、こうした政財界の動きには距離を置き、作品のインターネットへの配信もすべて断ってきた。鈴木氏は、その理由を、「作りたいものを、作りたいように作る現在の制作環境が破壊される懸念があるから」という。「よい作品を作る」ことを不変の目標に掲げるジブリにとって、ビジネス至上主義への傾斜を戒め、モノ作りの本道からはずれないことこそがブランド価値創造の源泉なのである。

海外での配給権の交渉に際し、映画の改編権を求めるハリウッドの映画会社を相手に一歩も譲らなかった舞台裏や、映画作りの意外なエピソード、プロデューサーとして28年間女房役をつとめてきた宮崎駿監督の知られざる魅力、などを聞きながら、鈴木氏のブランド哲学を探る。

主任研究員 七沢 潔