国内放送事情

ネットによる動画配信の時代

テレビ番組のVODサービスが始まっている。NHKやフジテレビが、今年7月から提供を開始したのを始め、日本テレビも10月からの開始を表明した。

各局が動き出した背景には、ブロードバンド・インターネットの普及、ユーザーの利用時間の増加、通信キャリアやISPが次々にVODサービスに着手していること、さらに経団連の提案を受けてネット配信に関する権利処理の暫定ルールが決められるなど、環境が整ってきたことがある。また今後について、国策を前提に一段の普及が見えてきたことも大きい。

しかし地上波テレビ各局の取り組みには、局によって差がある。日本テレビは設備投資をし番組制作者を投入して、独自コンテンツの制作にも乗り出す。一方フジテレビやNHKは、放送済み番組のマルチユースに徹している。リスクとリターンについて、戦略が大きく異なるのである。またTBS・テレビ朝日・テレビ東京の3局は、ネット動画配信については慎重に進めようとしている。番組制作自体を重視したり、映像パッケージや携帯ビジネスを優先したりと、各局でプライオリティが異っている。

いずれにしても、広告市場の大きな成長が望めない中で始まっている放送のデジタル化が、放送事業者に大きな変化をもたらそうとしているが、加えて市場を急拡大しようとしているブロードバンド・インターネットが、一段の変化を迫っている。

主任研究員 鈴木祐司