国内放送事情

障害者に災害情報は届いたか

~中越地震被災の視覚障害者・聴覚障害者聞き取り調査から~

災害が起きたとき、その原因や被災規模、避難の必要性などを伝える「災害情報」は被災者の命を守る重要な情報だが、実際の被災時には、ライフラインの断絶などでその伝達には多くの課題が生じる。そして、視覚や聴覚に障害があり、映像や文字、音声などの情報を獲得するのに何らかの支援が必要な人たちが災害に遭った場合、「災害情報」の獲得はよりいっそう困難となる。

本稿は2004年10月23日に起きた新潟県中越地震の際、視覚障害者と聴覚障害者がどのように情報を得、行動したのかを聞き取り調査した結果である。合計20人に、発災からの時間経過に沿って行動を聞き取ることで、障害者への情報伝達にどのような課題があるか、またどのような工夫をすれば情報が伝わるのかを考えることをめざした。

聞き取りの結果、発災時の情報の途絶、最初の2日間で障害別に情報獲得手段が分かれたこと、障害者にとって避難所が「行きにくい場所」であること、携帯の輻輳対策が功を奏し特に聴覚障害者に携帯メールが非常に多く使われたこと、新しいメディアを障害のある人たちが使い分けていたことなどが明らかとなった。

障害者への情報伝達の際に何が障壁となっているのか。また、新しいメディアが台頭することで情報の流れがどのようにかわっているのかを認識して、災害情報を障害のある人に的確に届ける努力が、情報を「伝える側」に求められている。

主任研究員 坂井律子