番組研究

進展する教室のデジタル化と教育利用のこれから

~2010年度NHK学校放送利用状況調査から~

「NHK学校放送利用状況調査」は、NHK放送文化研究所が1950年から定期的に実施してきた調査で、学校教育現場のメディア環境や利用実態などを調べている。

本稿では、2010年度に全国の幼稚園・小学校・中学校・高等学校を対象に実施した調査から、この4つの校種ごとに調査の結果分析を行い、デジタル化された教室におけるメディア利用と学習や保育との関わりについて考える。

地上デジタル放送の視聴は、幼稚園から高等学校まで、全国の約7割の学校・幼稚園で可能である。前回(2008年度)は、地上デジタル放送を視聴できるテレビの保有校の割合が10%台であったので、視聴環境の整備が大きく進んだといえる。パソコン環境も改善され、普通教室にインターネット接続パソコンのある学校が増加した(たとえば、小学校は36.0%→62.8%に増加)。総じて、国の「スクール・ニューディール」構想が実を結びつつあることがうかがえる。

NHK学校放送利用率(授業でテレビ学校放送番組、NHKデジタル教材のいずれかを利用しているクラスがある学校の割合)は、多少の変動はみられるものの、ここ3回の調査ではどの校種もほぼ同水準で推移している。小学校の利用率は73.2%で、2008年度の73.7%から変化はみられないが、授業でNHKデジタル教材を利用している学校は27.4%から38.6%に大きく増えた。普通教室のインターネット接続パソコンの整備によって、授業におけるインターネット利用が容易になったことが反映しているといえる。

一方、学校に各種機器が整備されたものの、それらが必ずしも有効に授業で活用されていない実態があることもみてとれた。配備されて日が浅く、教師に機器利用のスキルが不足していることも大きい。今後は、学校に学校放送番組・NHKデジタル教材の利用に適した環境の整備が進んだことをふまえ、教師に機器の活用のノウハウや教育効果が得られるような活用事例を紹介するとともに、それらを共有する仕組み作りも必要である。さらに、今後の学校放送利用の展開という点では、広く導入が予想される電子黒板やタブレットPCなどの利用を見据えた、次世代のデジタル・コンテンツの開発も求められよう。

メディア研究部(番組研究) 渡辺誓司・小平さち子