番組研究

視聴者は朝どのようにテレビを見ているのか

~主婦に対するデプスインタビュー調査より~

視聴者がテレビを見ている瞬間、チャンネルを変える瞬間に、何を考え、判断しているのか。それを的確に、また具体的にとらえるために一つの調査法を試行した。調査法の詳細と、その方法で調べた朝のテレビ視聴の実態を紹介する。

家庭の視聴者がどのような気分で、またどのような行動をとりながらテレビを見ているのか。そのようなことを調べるためにこれまではアンケート調査やグループインタビューなどを行なってきた。しかし、それらの方法では、本当に視聴者がテレビを見ているその時、チャンネルを変える瞬間に何を考え判断しているのかを聞き出すことは難しかった。

そこで今回は、家庭でテレビを見ているその画面そのものを録画し、その録画記録をインタビュールームで再生しながら、見ていたときのことを聞き込むというデプスインタビューを行なった。これは録画を再生しながら行なうことから「プレイバックインタビュー」(PBIと略記)と名付けた。

PBIでは、対象者自身が実際にテレビを見ていたのと同様の時間の流れが再現されるため、その他の方法ではなかなか聞き出せないような具体的なことや詳細について聞くことができる。

しかしPBIは、調査の準備に手間と時間がかかるため、一度に多くの対象者について調べることが困難で、その結果、異なる時期に行なう調査を積み重ねることになる。

そこで今回は、毎日、放送の実態も視聴の実態もあまり大きく変わらないと思われる、朝の時間帯についてPBIを試行してみた。

その結果、朝の視聴者はさまざまな意味で「部分的」にテレビを見ている実態が分かった。

すなわち、①時間的にある部分しか見ていない、あるいはチャンネルを変えるため番組のある部分しか見ていない、②朝の家庭は家族それぞれが出入りしながら見ているため、家族のうちの一部分しか見ていない、③視覚、聴覚の一部しか使わずにテレビを適宜見たり聞いたりしている、④画面のうちの時報だけ、天気予報表示だけ、交通情報のテロップだけ、など番組が提供する情報の一部しか見ていない、という四重の部分視聴である。

そのほか、テレビをあまり見ていないほうが視聴率が上がるという皮肉な現象が起こっていることも確認できた。

メディア研究部(番組研究)  齋藤建作