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研究発表・シンポジウム

2013年 春の研究発表とシンポジウム

東日本大震災とメディア Part1
実施報告
3月13日(水)、14日(木)、15日(金) 千代田放送会館(千代田区紀尾井町)
参加者数合計 のべ1,112人(3/13…320人 ,3/14…310人 ,3/15…482人)
3月13日(水)
シンポジウムネットでつながる“幸福”な中高生~中学生・高校生の生活と意識調査2012~
パネリスト
尾木 直樹 (教育評論家・法政大学 教授)
橋元 良明 (東京大学大学院情報学環 教授)
原田 曜平 (博報堂若者生活研究室 アナリスト)
報 告
村田 ひろ子 (NHK放送文化研究所 専任研究員)
政木 みき (NHK放送文化研究所 専任研究員)
司 会
岩本 裕 (NHK放送文化研究所 副部長)

バブル崩壊後の失われた20年に育った中高生の9割が「幸せ」と感じている—
  文研の行った「中学生・高校生の生活と意識調査2012」の結果をもとに、専門家を呼んで背景を探りました。専門家からは「デフレの日本しか知らない中高生は社会に対する期待も低く、身近なことで満足感を高めている」「ネットは、世界とつながるためというより仲間との関係を楽しくするために使われている」「親子の意識が近づき関係が良くなっている」「東日本大震災での助け合いをきっかけに、日本社会への評価が高まっている」といった指摘が出されました。

尾木直樹氏

橋元良明氏

原田曜平氏

*調査結果の報告は、NHK放送文化研究所「放送研究と調査」2013年1月号2月号3月号に掲載されています。

シンポジウム蓄積から“創造”へ ~放送文化アーカイブ構想の可能性~
パネリスト
高野 明彦 (国立情報学研究所 教授)
丹羽 美之 (東京大学大学院情報学環 准教授)
保坂 裕興 (学習院大学文学部 教授)
ビル・トンプソン (英BBCアーカイブ開発)
報 告
村上 聖一 (NHK放送文化研究所 専任研究員)
阿辺川 武 (国立情報学研究所 特任准教授)
司 会
米倉 律 (NHK放送文化研究所 主任研究員)

テレビ60年を機に、文研では、放送史関連資料や、研究論文、調査データなどを格納する文書系アーカイブとしての“放送文化アーカイブ”を構築し、内外の他の知識アーカイブと連携する計画をスタートさせています。同様の試みは、英BBCや米PBSなど世界の公共放送でも進められています。専門家、研究者、英BBCの担当者らを交え、その可能性や課題、目指すべき方向性などについて議論しました。

高野明彦氏

丹羽美之氏

保坂裕興氏

ビル・トンプソン氏

3月14日(木)
研究発表中国への「配慮」強まる台湾・香港のメディア
報 告

山田 賢一 (NHK放送文化研究所 主任研究員)


  台湾や香港のメディアでは最近、中国に“配慮”した報道が増えていると言われます。その背景には、中国と台湾・香港の経済緊密化が進む中、台湾や香港のメディアを所有するビジネスマンが、中国ビジネスへの悪影響を恐れ、中国に批判的な報道を控えるよう編集部に指示していることがあると指摘されています。2012年に表面化したいくつかの“事件”を通して、台湾・香港メディアの変貌ぶりと、それに対して異議を申し立てる市民団体の活動などを紹介しました。

*この報告の主な内容は、NHK放送文化研究所2013年5月号6月号に掲載されて います。

研究発表「被災者」ではなく「被災した人」 ~震災報道で取材者が選んだことば~
報 告
井上 裕之 (NHK放送文化研究所 主任研究員)
コメンテーター
林 香里 (東京大学大学院情報学環 教授)
寺島 英弥 (河北新報社編集局 編集委員)

東日本大震災でNHKの取材者たちが使っていた「ことば」や「表現」をアンケートで調べ、ジャーナリズムの視点から考察を加えて発表しました。取材者は「取材」のときには、“一人の人間”として被災者一人一人に「共感」し、コミュニケーションをとっていたこと。その結果、「放送」のときには、『被災者』よりも個々の“人格”が残る『被災した人』ということばを選んでいたことなどを伝えました。2人のコメンテーターには、ジャーナリズム研究や地元新聞の視点から意見をいただき、発表内容について議論を深めました。

林香里氏

寺島英弥氏

シンポジウム3.11震災アーカイブ活用の可能性~防災・減災、復興にいかすために~
パネリスト
今村 文彦 (東北大学災害科学国際研究所 教授)
矢守 克也 (京都大学防災研究所 教授)
三浦 稔 (気仙沼市危機管理課 主査)
水島 久光 (東海大学文学部 教授)
宮本 聖二 (NHK知財展開センター 副部長)
司 会
田中 孝宜 (NHK放送文化研究所 主任研究員)


  膨大な映像や写真で記録された東日本大震災。震災直後から、NHKをはじめ、大学や被災自治体などさまざまな機関が震災関連アーカイブの構築に取り組んできました。そうしたアーカイブを将来の防災・減災、そして復興にどう活用できるのか、また、長期的に有効活用していくためには何が必要なのか。 東日本大震災アーカイブ活用の可能性と課題について考えました。

今村文彦氏

矢守克也氏

三浦稔氏

水島久光氏

宮本聖二氏

*シンポジウムの採録は、NHK放送文化研究所「放送研究と調査」2013年7月号に掲載されています。

ワークショップアーカイブ番組を大学教育にいかす ~“沖縄eテキストシステム”の実践から~
発言者
伊藤 守 (早稲田大学教育・総合科学学術院 教授)
田仲 康博 (国際基督教大学教養学部 上級准教授)
七沢 潔 (NHK放送文化研究所 主任研究員)
宮田 章 (NHK放送文化研究所 主任研究員)  ほか
司 会
原 由美子 (NHK放送文化研究所 研究主幹)

  
  文研が開発した、アーカイブ番組をウェブを通して大学の授業に配信する「番組eテキストシステム」のしくみを紹介し、「NHKアーカイブスで学ぶ沖縄現代史」というテーマで2012年度、早稲田大学で行われた半年間15コマの授業の模様を報告しました。教育の場を喚起するアーカイブ映像の力をあらためて感じさせると共に、ネットがつながる場所なら、いつでもどこでも、紙の教科書のように閲覧できる利便性が強い印象を与えました。

伊藤守氏

田仲康博氏

3月14日(木)
研究発表テレビ60年を迎えた視聴者の現在~広がる“カスタマイズ”視聴と“つながり”視聴~
報 告

平田 明裕 (NHK放送文化研究所 専任研究員)


 テレビ60年を迎えた現在の視聴者の特徴について、世論調査の結果から報告しました。録画してテレビ番組を見たり、インターネットでテレビ番組動画を見たりと、自分本位にテレビを見る“カスタマイズ”視聴と、SNSでテレビのことを読み書きしたり、会話を楽しむために家族でテレビを見たりと、人とのコミュニケーションの中でテレビを見る“つながり”視聴の2つの視聴スタイルについて分析しました。現在の視聴者は、“カスタマイズ”視聴と“つながり”視聴を上手に使い分け、自分の生活にあわせて見る“自分流視聴”をしているといえます。

*調査結果の報告は、NHK放送文化研究所「放送研究と調査」2013年6月号7月号に掲載されています。

シンポジウムソーシャルパワーがテレビを変える
パネリスト
杉本 誠司 (株式会社ニワンゴ 代表取締役社長)
鈴木 謙介 (関西学院大学 准教授)
若井 真介 (日本テレビ編成局メディアデザインセンター長)
桑原 知久 (NHK編成局 編成主幹)
報 告
小川 浩司 (NHK放送文化研究所 専任研究員)
司 会
塩田 幸司 (NHK放送文化研究所 部長)

シンポジウムでは、SNSの普及などで個人が情報を発信・共有・拡散することをソーシャルパワーと名付け、それがテレビメディアやテレビ局にどんな影響をもたらすのかについて議論しました。テレビ局のパネリストからは、リアルタイムでテレビを視聴してもらうためSNS活用に積極的に取り組んでいる事例が報告されましたが、ネット事業者や専門家からは、そうした取り組みがどこまで視聴者のニーズに合致しているのか、などの指摘もなされました。忌憚のない議論を通じ、これからのテレビ局の果たす役割、進むべき方向性が見えてきました。

杉本誠司氏

鈴木謙介氏

若井真介氏

桑原知久氏

*シンポジウムの採録は、NHK放送文化研究所「放送研究と調査」2013年7月号に掲載されています。