発掘ニュース

No.036

2014.12.12

ドラマ

いぶし銀”の名優・大木実さん『早筆右三郎』!

2009年にこの世を去られた俳優の大木実さん。映画をはじめNHKでも数々のドラマに出演、まさに“いぶし銀”という言葉がふさわしい名脇役として活躍されました。

2006年放送 土曜ドラマ「ディロン~運命の犬」から

その大木さんが大切にしていたビデオテープをご家族から提供いただきました!ドラマのタイトルは「早筆右三郎」(はやふでうさぶろう)。1978(昭和53)年4月5日~12月6日まで全34回放送されたドラマです。

江戸時代の新聞ともいえる「かわら版」の記者が、次から次へと出会う事件を、周りの人々と一緒になって解決していくストーリーです。

主役の右三郎を演じるのは江守徹さん、当時34歳。ドラマの中では“早筆人(はやふでにん)”と呼ばれています。
NHKアーカイブスでの『早筆右三郎』の保存はこれまで…

第1回「象が出島にやってきた」
第2回「馬のもの言い」
第6回「飛んで火に入る…」
第10回「一番富 夢の百両」
第16回「日照りに咲いた水の華」
第22回「なんだ神田の藪の中」
第28回「消えた舞扇」
以上の7本でした!

今回、提供いただいたのは…

第29回「敵討たれたく候」という、大木実さんが主人公となった回です!
タイトルにあるようにテーマは“敵(かたき)”。江戸時代に認められていた「敵討ち(かたきうち)」です。(「仇討ち(あだうち)」ともいわれます。)

無精ヒゲをたくわえた浪人・吉村大次郎(※)を演じる大木実さん、当時54歳。過去に何か大きなものを背負って生きる、謎を秘めた存在として登場します。

「人を探している」と語る大次郎に、早筆右三郎は力になれれば…と相談に乗ります。

そこに「町中で仇討ちだ~!」との知らせが。右三郎は「仇討なんてものは、元々お祭り騒ぎするような代物じゃねぇんだ!」と取り合いません。一方、大次郎は“仇討ち”という言葉に強く反応し現場へ…

討たれる敵(かたき)の方には大勢の助っ人が加勢しています!返り討ちになりそうだとのことで割り込んだ大次郎。

「待った、待った!邪魔はせぬが恥を知れ!返り討ちも世の習いとはいえ、多勢に無勢とは見苦しや!…一対一にて、無念の刃(やいば)を受けられよ!」…とは言ったものの、なんと…

実際には“あべこべ”!大次郎が守ろうとしたのが敵(かたき)…!大勢いたのが仇討ちを果たそうとする群勢でした。3年前に兄を討たれた仇討ちだといいます。危うくだまされそうになった大次郎はなす術もありません。
それにしても、仇討ちの時には、こんな“許可証”があったのですね!

さて、“仇討ち”という言葉に大次郎が強く反応したのには理由がありました。
実は、大次郎が探しているのは自分のことを「仇討ち」しようとしている“討っ手(うって)”!自分のことを殺そうとしている人間を探していることに右三郎たちは驚きます。

大次郎は右三郎に 「なにとぞ、その方の筆で吉村大次郎が、討っ手・時実弥助(※ときざね やのすけ)を探しておると書いてはくれまいか?…15年、わしを探しておる者の身になってやってもらいたい。一日も早く巡り合わねば、あまりにも相手がふびんで…」
と、かわら版に書いてくれるよう頼みます。しかし右三郎は書こうとしません。

「仇討ち」の話題は必ず売れると、かわら版を作る“大将”(中条静夫さん)は判断。右三郎とは別の記者が書いたかわら版が町に出ます。

その「かわら版」を読んで乗り込んできたのが…

自分たちの兄を討った、時実弥助を探しているという侍たち。つまり大次郎が探している“討っ手”は、実はこの侍たちの敵(かたき)…。何がなんだか分からなくなってきます!?

右三郎は怒ります。

「だから言っただろう、仇討ちなんてのは所詮“いたちごっこ”だと。大将の…そろばんが次から次へと血を呼ぶんじゃねえか!」
『売れるから書く』…それで良いのか?と疑問を投げかけます。

この先、大木実さん演じる大次郎はどうなるのでしょうか?!続きが気になるところですが…。番組公開ライブラリーで全編をご覧いただけるよう手続きを進めてまいりますのでお楽しみに!

さて、今回ご提供いただいたビデオは大木実さん、そしてご家族にとっても特別な1本だったようです!
大木実さんのご長男・大木聡さん(2年前に他界)の奥様でありマネージャーだった伏田なが子さんにお話を聞くことができました!

Q 今回提供していただいた映像については、以前からご存知でしたか?
「いいえ、大木が他界して遺品整理していた時に偶然、古いVHSテープが見つかり、かなり傷んでいたのでDVDにダビングして見てみたら、大木が映っていたんです。」

Q ご覧になられていかがでしたか?
「自分の作品を録画して残すという事が好きではない人だったので、この作品がとても気に入っていたのだと思います。立ち回りのシーンなど、他の時代劇では見る事の出来ない、クオリティの高さが感じられる作品だと私自身も思います。」

Q 改めて惚れ直されたとか?
「はい(笑)この作品は主人公よりも目立っている、そんな印象です。ゲスト出演させて頂いているにも関わらず本当に目立っているんですよね。家族の“宝もの”として大事にしていきたいです。」

なが子さん、そして素晴らしい作品を残してくださった大木実さん、本当にありがとうございました!NHKアーカイブスでも末永く大切に保管させていただきます。

さて次回も大木実さんが出演した作品です!そのワンシーンがこちら。

ここでクイズです!この番組のタイトルは何でしょうか??
分かった方はこちらまで!来週をお楽しみに!

(※)吉村大次郎(よしむら だいじろう)と時実弥助(ときざね やのすけ)の名字は、出演者テロップに書かれておらず、台本などの資料も無いため音声に当てて一般的な漢字で表記しました。

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