No.035
2014.12.05
趣味/教育
発掘!これが科学バラエティーの元祖かも!?
今回の発掘番組はこちら!
1962(昭和37)年放送「おとうさんの手品」です。
どんな番組かと言いますと…
タイトルから想像するのはちょっと難しいですが、子供向けの“科学番組”です。
毎日夕方に放送されていた『こどもの時間』という枠の中の番組の一つです。
まずはこの『こどもの時間』の紹介から!
『こどもの時間』は「みんなのうた」「魔法のじゅうたん」「チロリン村とくるみの木」「ものしり博士」「宇宙船シリカ」「ホームラン教室」などを生みだした、アーカイブス番組の“宝箱”のような枠です!
月曜から土曜まで、曜日毎にメニューが変わり、歌やマンガ(この頃はアニメというよりマンガです!)、ドラマなどが並んでいました。まさに子供たちのパラダイスのような時間帯!しかも教育テレビではなく総合テレビです。
今回発掘された「おとうさんの手品」が放送された、昭和37年1月26日(金)の『こどもの時間』のラインナップはこんな感じです。
●午後5時41分~ 「こどもニュース」
● 5時45分~ 「おとうさんの手品~二つの電流」
● 6時00分~ 人形劇「チロリン村とくるみの木~リップちゃんとイタチ」
● 6時30分~ 「みんなのうた」
● 6時35~50分 ドラマ「黒百合城の兄弟」
さて、今週の本題にまいりましょう!
この日の「おとうさんの手品~二つの電流」は“ある実験室”から始まります。
ビリビリ博士実験室!いかにも電気のことを調べていそうですね。
この方がビリビリ博士!実験室に訪ねてきた人が…
「こんにちは!ビリビリ博士いますか?ちょっとお伺いしたいことがあって来たんですが。」
「何か聞きたいことがある…こりゃまた珍しいね。」
「この実験室にものを尋ねに来るなんて!」
最初からコントのようなやりとり…!
「私は電気の事なら何でも分かるビリビリ博士、ひとつ遠慮なく聞きなさい!」
「実はこのヒーターなんですが、スイッチを入れると“ブーン”って、とっても変な音を出すんです。なんだか気味が悪くて、いったいどうして“ブーン”ていうのかそれをお聞きしようと思って。」
「なるほど、それはおかしなヒーターですな!試しにスイッチを入れてみましょう。」
すると…“ブーン”っと鳴りはじめます!このヒーターとは、いわゆる電熱器。ニクロム線をグルグル巻いたものに電気を通して熱を発生させ、お湯を沸かしたりするアレですね!確かに“ブーン”と音がするのを覚えています。
博士はというと…「こりゃあ実に珍しい!まことに不思議なヒーターです!」
「まあ博士、スイッチを入れて“ブーン”と鳴るのは、何もそのヒーターに限った事ではないんですよ。どれでもそうなんですよ」とあきれ顔の助手の女性。
「でもどうして“ブーン”て唸るんでしょうね?私もお聞きしたいと思っていたんです!」
自信満々の博士…
「これはヒーターが身震いする音なんです!…電気を通すとヒーターが突如として興奮のあまりブルブルっと震わす。それがつまり“ブーン”という音になる。お分かりかな?」
納得できない2人…、そりゃそうですね(笑)でもここからが、この番組のスゴイところです!
“本物の博士”が登場!
「ヒーターが身震いするとは、なかなか珍妙な説ですな。初めて聞きました。」と一蹴!
この博士の説明が実に分かりやすい!!
「ここに2つの電源があります。まず右側の電源にプラグを差し込んでみます。…おや~、ちっとも“ブーン”といいませんね。」
一方、左側の電源に差すと…
「おっ、今度は“ブーン”といい始めましたね!」
ここで2人の博士のツーショット!『ワイプ』と呼ばれる映像手法を使っています。今やバラエティー番組をはじめ、様々な番組で使われる『ワイプ』。この時代から使われていたんですね!
ビリビリ博士からの質問「どうして鳴ったり鳴らなかったりするんでしょう?」
さて“本物博士”の説明です!
「電気の流れ方、電流には【直流】と【交流】の2つがあるんですね。【直流】というのはいつも電気が一つの方向に流れている。【交流】というのは、ある時間こっちに流れたら別の時間(反対側の)こっちに流れる…」と身ぶりを交えて説明。
そしてニクロム線の巨大な模型登場!
「そういう電気をヒーターに通すわけです。ヒーターの熱線、ニクロム線はバネのように巻いてあります。こういうものに電気が通りますと、この真ん中に磁場が出来るものですから…
ギューっと縮まるんですね!これは電流がどちらに流れても同じです。」
「【直流】を流したとすれば、いつも同じ方向に流れているので縮んだまま。これでは”ブーン”と鳴るはずはありません。最初の電源は【直流】だったんです。」
「そこで【交流】を流したらどうなるでしょうか?…電流の方向が変わる途中で、電気が流れなくなることが一時あるわけです。丁度、引き潮と満ち潮の真ん中で水が流れなくなるのと同じで…電流が切れた時に、縮んだバネがパーンと開く。逆の方向に電流が流れて縮んでまた開く。…交流は1秒間に何十回という程これをやるので”ブーン”と鳴ってくるわけですね!」
いかがですか?番組で映像を見ながら話を聞くと本当に”ガッテン”です!
さらに、しばらくすると”ブーン”と鳴らなくなるのは、真っ赤に熱せられたニクロム線が柔らかくなって弾力が無くなり振動しなくなるためだと続きます。
すっかり意気消沈したビリビリ博士…最後には、看板をはずして「私はお話しを聞いてすっかり恥じ入ってしまいました。これから再出発です。勉強のしなおしです!」と旅立ってしまいます。
次の週が気になるところですが…残念ながら保存はありません。
以前にご紹介した「ウルトラアイ」や現在放送中の「ためしてガッテン」に引き継がれている、NHKの科学バラエティー番組ならではの“分かりやすさ”や“面白さ”が、この番組にはあります!
そして子供たちが理解できる分かりやすさ、それこそがテレビ番組の目指すべき姿だと教えてくれる番組です。