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青森県田舎館村の田んぼアート 作り方や「モナリザ」進化の秘密を探ります

  • 2022年11月28日

今回のナノコエは中泊町の佐々木剛志さん・富美子さんご夫婦から「田んぼアートはどうやって作っているの?」という質問をいただきました。

田んぼアートといえば、ことし制作された「モナリザ」が大きな反響を呼びました。
2003年にも制作されたテーマだったのですが、比較するとすごい差が出たのです。

ネット上でも「ファミコンからPS2並みの進化を感じますね…」「めちゃくちゃ進歩してる…」などの声が。
わたしはことし初めて田んぼアートを見たのですが、皆さんと同じく、その陰影・迫力に圧倒されました。どうしてここまでの進化を遂げたのか…。その秘密、わたしも気になる!!!
ということで、探ってみました。
田んぼアートの作り方を調べていると、たどり着いたのはこの2人の存在でした。

 

まずはデザインを手がけるこの人。
県内各地の特別支援学校で美術の教師をしていた山本篤さんです。
これまで20年近くにわたり、およそ30のデザインを手がけてきました。

2003年の「モナリザ」は初めて山本さんがデザインを手がけたものでしたが、試しに描いたものを元に制作されたもので、「太っている」などと厳しい評価を受けたといいます。

山本篤さん

最初のモナリザは自分としてはあんまりデザインした感じはないです。
試しに作ってみたよ、くらいの感じなので。展望台から見ても、モナリザには見えないよと(役場の人に)話したのですが、このままで大丈夫だと言われました。

クオリティが低くなるだろうと山本さんは当時、完成したものを見に行きませんでした。
そこで山本さんがレベルアップのために取り入れたのが「遠近法」。

距離にあわせてデザインを引き延ばし、展望台から平面に見えるよう遠近法を取り入れて、少しずつレベルを上げました。

山本篤さん

私も初めてそういう遠近処理したので、理屈ではわかってるんですけども、実際にやってみたら顔がこんなに大きくなっちゃって。
これでまともに見えるのかなと不安になったので、このときはかなり弱めに遠近法かけてます。

役場の展望台からきちんと平面に見えるように、試行錯誤を重ね、10年以上の技術の蓄積を経て、今回モナリザに再挑戦しました。
山本さんは、高評価が寄せられたことに胸をなで下ろしていました。

山本篤さん

ものすごい進化だ、今年は素晴らしいというふうな声はたくさんもらった。
リベンジとしては大成功だったと思います。とにかくたくさんの人が田舎館に興味を持って見に来てもらえるようなものを作って行きたいと思ってます。

そして、もう1人のキーパーソンがこちら。
工藤浩司さんです。
測量会社に勤めていた経験から2009年から設計図作りを担当しています。

山本さんのデザインを元に、家などを設計する専用のソフトを使って、色の異なる稲を分ける目安となる「作業点」の位置を手作業で決めていきます。
本業のトマト農家の傍ら、並行して1週間ほど設計図作りを行うのですが、その期間中のスケジュールはかなりハードです。

なんと少ないときでは睡眠時間が2時間になるそうです。

工藤浩司さん

トマトを朝6時から11時ぐらいまでやって。昼飯食べて。CADやって。3時ごろからまたハウスに行って。5、6時まで仕事して。帰ってきて、まだやると。地道にやるしかないのでビールをちょっと飲んで勢いつけてやってます。

工藤さんが設計するときに意識するのは点の数。
多ければ多いほど細かい色分けや表現が可能になります。

しかし、実際の田んぼでこの点の位置に棒を立てることになるため、点が多いとその分田んぼでの作業量も増えてしまいます。
そこで工藤さんは原画を見ながら、大雑把に点を打ってもデザイン上、問題ないところを見極め点の数をできるだけ減らしているのです。

工藤浩司さん

本来であればそのままやってれば、多分また1万2,3000点ということになった。長年やってきたノウハウを駆使して8000点まで落とした。やっぱ地元発祥のものだということで役場の方も図柄とかにはこだわってきた。それで自分もちょっと力が入ってきたところもある。来年も頑張って発祥の地として協力します。

こうして2人の手によって田んぼアートの制作の下地が整うのです。
長年やってきた技術の蓄積で田んぼアートが飛躍的にレベルアップしたのだと、2人の話を聞きながら強く感じました。

このあとは工藤さんが作った設計図をもとに役場の職員や業者が測量を行い、田植えのための棒を立てていきます。そして、こちらも熟練の腕を持った地元の農家の方々が田植えを行います。

稲は3色からスタートして、今は7色10種類の稲を使用しています。
ちなみにすべての稲にコメは実るのですが、味がよくないので食べられるのは1種類だけだそうです。
この田んぼアート、いまや総勢100人以上が関わって制作されていて、村の人の思いが詰まった作品だと感じました。
テーマは前の年の10、11月にはだいたいの方針が決まっているということで、今からとても気になりますね!

この田んぼアート、ことしは11万人以上が見に訪れたということですが、田んぼアートだけみて村に滞在してくれないことが課題となっているんだとか。
本当の意味での地域おこしになるために、わたしたちも何か後押しができないかと思いました。

  • 砂川侑花

    砂川侑花

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