シリーズ「18祭先輩たちのうしろ姿」〜あの時みんな18歳世代だった〜

犬塚悠剛[1期生]

Each color, なんにでもなれる 18歳

 18歳、まだなんにでもなれると言われた年齢。しかし、他人と同じようになれるという訳ではないし、すぐに自分の理想の人になれるわけでもない。

 18祭練習会。僕は、隣の人のように上手に歌ったり、前に出ている人のように皆を元気づけたりできなかった。みんなより自分の色を持てていないな、そう感じていた。一人ぼっちで参加した18祭、最初は不安も大きかった。

 しかし、周りの皆は僕に優しく接してくれて、友達もできた。音楽を愛してやまない人や、自分の夢を明確に持って突き進んでいる人。僕の持っていないものを持つたくさんの人たちの中で、僕も何か力になりたい。その気持ちで、僕は英詞をなんとか噛み砕いて、みんなへ共有してみた。

 思い返せば、ところどころ間違っていたかもしれないし、役に立っていなかったかもしれない。それでも、皆のおかげで自分を肯定できるような感情になれたし、チームの一員であるという実感を得ることができた。

 そんな、参加者一人一人が、自分たちの色を全力で出し切った18祭。一度限りのWe are。成功では言い表せない最高の歴史となった。1000人の中では、僕がやれたことは本当にちっぽけだったけれど、あの素晴らしい舞台を作った一人であることを今でも誇りに思っている。

 それから6年、いろんなことがあった。テレビ局や他大学の人たちとのテレビ番組制作。大学のチームで参加したロボットコンテスト世界大会。インターンの仲間と製作した調理ロボットの海外展示会と実証実験。それぞれの色を持つたくさんの人たちの中で、自分が役に立てることを探して、何かを達成できたときはとても嬉しい。もちろん失敗することもあるけど、それでも得られるものがある。18祭で得られた経験は、これまでずっと生きている。

 今、自分は研究の世界にいる。研究対象は、身近なものの作り方は大体わかるぞ、という自分の過信を跳ね飛ばした、細胞だ。身近どころか身である。この細胞を研究する医学・生物学において、工学や物理学に触れた自分にできることを模索しながら、ここ数年は顕微鏡開発や細胞の解析に取り組んでいる。ちなみに、細胞は動きのバリエーションが豊富で、単純に見ていて面白い。実際、何十億年も前に作られて、それから増殖や進化をし続けて今も生きている細胞、面白くないわけがない。この小さくて偉大な細胞を、僕ら人間が自在に作れるほどに理解することに貢献したいと思っている。

 また、18祭で感じた交流の重要性にも通じる、日本中の若手研究者が集う会の運営にも力を入れている。人を引っ張るのが苦手だった自分も、今では悩みつつもチームを率いて、一歩ずつ進んでいる。

 人生、ある基準では絶対に他人には勝てないことが頻繁に起こる。環境によって、隣の人の方が世間的に良い立場になることがあるかもしれない。後輩に負ける感触を得ることがあるかもしれない。

 しかし、何か一つの基準で他人と自分を比べすぎて、悲観的になる必要は全くないと思う。その分、自分はその人にはできない何かができるはずだ。自分のできること一つ一つを、ちっぽけでもいいから探して、時には失敗して、見つけたら大事にして、自分の色を確立していく。こうして、周りの人との関係性の中で、一からちょっとずつ「なんにでもなれる」ということかもしれないと今は感じている。

 そして、自分のできない何かができる、自分のできる何かができない、周りの人を尊重して協力し合えば、できることが増えていく。皆が持つさまざまな色で世界を照らして、明るい未来を作っていけたら素晴らしいなと思う。18祭から少しずつ自分の色を見つけられてきた僕も、またその一員として頑張りたい。

 We are the colors in the dark.