おっぱいはいつまであげたらいい? どうやってやめたらいい? 先輩ママや専門家と一緒に考えます。

専門家:
市川香織(東京情報大学 教授/助産師)

おっぱいは、いつまで続けていい?

娘が2歳になる誕生日で、おっぱいを卒業しようと考えていました。娘に「2歳になったらバイバイできる?」と話して、親子で卒業する日を決めていたんです。お兄ちゃん(5歳)も同じ方法でやめてくれたので、うまくいくと思っていました。でも、2歳の誕生日のあとも、激しくおっぱいを求めてきて、結局今も続けています。
親がやめると決めていいのか迷い、子どもが求めてくるなら応えたい気持ちもあります。「1歳過ぎてまだあげてるの?」と言われたママもいて、世間体も気になります。おっぱいは、いつまで続けていいのでしょうか?
(お子さん5歳・2歳のママ)

―― すくすくファミリーのみなさんはいかがでしたか?

  • 2歳になってから断乳して、2週間以上かかりました。
  • 1歳半ごろ「そろそろやめようかな」と思いましたが、「親の都合でやめていいのか?」と迷いがありました。最終的に、2歳半過ぎに卒業しました。

―― 市川さん、いつまで続けていいのでしょうか?

母乳以外の栄養がとれていれば2歳を超えても大丈夫。あせらず親子で卒乳時期を決める

回答:市川香織さん

悩みますよね。WHO(世界保健機関)によると、2歳以降も母乳育児を続けることが推奨されています。ただ、おっぱいの卒業時期は、私たち専門家を含めて、誰かが「あなたの場合はいつがいい」と決めることではありません。それぞれの親子で決めるのがよいでしょう。母乳が大好きで離乳食が進まず、成長がゆっくりになっている場合は、「早めにやめましょう」とアドバイスされることもあります。
子どもが母乳以外の食事からも栄養をしっかりとれて、ママも授乳をたのしめているのであれば、2歳を超えても全く問題はありません。あまりあせらずに親子で決めていけるといいですね。


親子で納得できるおっぱいの卒業、どうやったらいいの?

この春から仕事に復帰。娘(1歳9か月)を保育園に預けて、朝からフルタイムで働いています。夜は眠りたいのですが、深夜でもおっぱいを求めてぐずり泣きをして、1時間ぐらいあげることもあります。そんな毎日に疲れて、おっぱいの卒業を考えはじめました。
でも、どうやって卒業したらいいのか方法がわかりません。私が仕事から帰ると、すぐに「おっぱい」と言われるほど、とてもたのしみにしているので、卒業は簡単ではなさそうです。これだけ好きなのに、強制的にやめることに葛藤もあります。
先輩ママから、「やめる日を決めて、その日からおっぱいを見せない、そのことを考えさせない」とアドバイスをもらいましたが、ふんぎりがつかない状況です。親子で納得できるおっぱいの卒業は、どうやったらいいのでしょう?
(お子さん1歳9か月のママ)

―― すくすくファミリーのみなさんはいかがでしたか?

  • カレンダーにやめる日の印をつけてカウントダウンしました。卒乳後は、おっぱいタイムの代わりに、だっこ・スキンシップの時間をたくさん作りました。三日三晩はとても大変でしたね。でも、泣く時間が1時間半だったのが、翌日には1時間、次の日は30分のように、徐々に短くなりました。やっぱり泣かれると苦しいので、イヤホンなどをして少し罪悪感を軽減したり、子守歌をうたったり、トントンしてあげたりしながら耐えていました。

  • ばんそうこう作戦でした。おっぱいにばんそうこうを貼って「おっぱい痛いからママはもう出ないんだよ」と言うんです。そうしているうちに飲まなくなりました。「ママかわいそう」と思ったのかもしれません。

鈴木あきえさん(MC)

わが家も最初の3日間が山場でしたね。4日目ぐらいから、子どもがあきらめたのか、忘れてきたのか、ケロッとしていました。急に離れていったので、逆に私の心情が追いつきませんでしたよ。

―― 市川さん、みなさん卒業に向けて頑張っていますね。

おっぱいの卒業には家族の協力が必要

回答:市川香織さん

本当に大変ですよね。例えば、それまでおっぱいをあげていたママが急に変わると、子どももびっくりしますよね。やはり切替のときには、パパなど家族の協力が必要だと思います。

おっぱい以外の安心材料を

回答:市川香織さん

子どもに、「おっぱいがなくても自分は大丈夫」と思える安心材料ができるといいですね。例えば、トントンされたり、スキンシップで触れ合ったりです。
また、うまくいかないときや体調を崩したときに、おっぱいに戻ったとしても「元に戻ってもいい」と考えてください。「戻れる」という安心も大切です。正解はないので、模索しながら進めましょう。


先輩ママのおっぱいの卒業

7年前、すくすく子育てに出演して悩みを聞かせてくれたママがいます。当時、仕事復帰したばかりで、お子さんは1歳5か月。特に夜の授乳がつらく、卒乳したくてもおっぱいが大好きで、どうすればいいのか悩んでいました。
※すくすく子育て「教えて! おっぱいの卒業」より

そんな悩みに、専門家の笠井靖代さん(日本赤十字社医療センター/産婦人科医)は、「子どもがおっぱいから自然と離れるまで、ママが疲れない範囲で続けられるとよい」とアドバイス。これを聞いたママは、卒業ではなく、無理なくおっぱいを続ける方法を考えたといいます。そのときのことをママに聞きました。

まず夜中の授乳をやめました。私が一泊だけ、別の所に泊まって、夫が一晩中泣いている子どもをみてくれました。翌日からは、背中をトントンすると寝るようになりました。
保育園から帰ったときのおっぱいは、すぐにやめることはできませんでしたが、自然に卒乳する時期を待つことにしました。夜がないだけで体の負担が減って、これなら大丈夫だと思ったんです。
その後、2歳半を過ぎたころ、自然におっぱいから離れていきました。赤ちゃん用のせんべいやお菓子のほうがよくなって、いつ終わったのか覚えてないぐらいです。
授乳に関して後悔はなく、やりきった感覚です。自然にまかせたことが自分のためにもなったと思います。
(ママ)


すくすくファミリー

わが家も夜間の授乳がきついことがありました。でも、卒乳で保育園から帰ってきてからのおっぱいもやめるのは、親の都合で、子どもに過酷かもしれないと思っていました。夜だけやめるのはお互いにいい方法かもしれません。外泊するのは考えたこともなかったので、パパと相談してみたいです。

市川香織さん

あらためて、おっぱいの卒業は家族の一大イベントだと感じますね。


こどものホンネ
赤ちゃんのころのこと、覚えてる?

子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!

「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「赤ちゃんのころ」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!

―― 赤ちゃんだったときのこと、覚えていますか?

  • (子どもたち)はーい!

―― どんなことを覚えているの?

  • ママが寝かせてくれた。トントンしてくれた。
  • お兄ちゃんがミルクを飲ませてくれた。
  • ママがトイレにいったときに、イスにのぼろうとして失敗した。怒られた。

みんな、意外と覚えているんですね。今度は、おなかの中にいたときのことを聞いてみました。

―― おなかの中は、どんな場所だった?

  • なんかフワフワだった。コチンコチンって音がした。スプーンでお皿をコチンってやる音。
  • お野菜を丸焦げにした音が聞こえてた。ジューって。
  • 旅行に行ってた。ママが注射された穴が役に立っていろんなことが見えた。

注射の穴から外が見えるなんて、とても不思議な世界ですね。

―― おっぱいを飲んだときのこと、覚えている?

  • (子どもたち)おいしかった。

―― 今もママのおっぱいを飲みたい?

  • 思わない。
  • 飲まない。だって5歳だから。
  • おっぱい何時間でも飲みたい。ベビーって呼ばれたいから。

ベビーと呼ばれたいなんて、ユニークな発想ですね。
意外にも、みんなが覚えていた赤ちゃんのころのこと。不思議な話をたくさん聞かせてもらいました。


おっぱいの卒業、子どもへの影響は?

卒乳すると決めた日の晩は、ものすごい勢いで「ギャン泣き」が止まりませんでした。「どうしよう? どうなっちゃうのかな? 息が止まったらどうしよう?」と、とても心配になりました。
(お子さん8歳・3歳のママ)

おっぱいの卒業のとき、子どもに泣かれて心配になることもあります。いわゆる「ギャン泣き」をされるとつらいですよね。まだおっぱいを欲しがっているのに、卒業させなければならない場合もあります。

そんなとき、子どもの心に影響はないのでしょうか。おっぱいの卒業について、発達心理学が専門の遠藤利彦さん(東京大学大学院 教授)に聞きました。

卒業のときに心に傷が残ることは考えなくていい

回答:遠藤利彦さん

おっぱいの卒業のときに、子どもの心に傷が残るようなことを考える必要はありません。もちろん、それなりに泣いたりぐずったりする期間が続くかもしれませんが、親子で乗り切っていきましょう。

―― おっぱいの卒業を親子で乗り越えるために大切なことはなんですか?

アタッチメントが、子どもが健やかに成長するための支えになる

回答:遠藤利彦さん

授乳には、子どもに栄養を与えるだけではなく、スキンシップという要素が伴います。さらに、もう1つ「アタッチメント」という要素もあります。「アタッチメント」とは、心理学で、子どもが不安なときに信頼できる大人にくっつき(アタッチして)、安心感を得ようとする行動・欲求をいいます。

おっぱいを卒業するときに、特に心がけたいのがアタッチメントです。「皮膚と皮膚がぴったりくっついて気持ちがいい・心地がいい」というスキンシップの体験や、怖くて不安なときはママ・パパにしっかりくっついて「大丈夫」と安心感に浸る経験ができていれば、おっぱいを卒業したあとも、子どもが健やかに成長するための支えになります。そんな安心感に支えられて、子どもはいろいろなことにチャレンジするようになります。アタッチメントは、自立することにもつながっているのです。


鈴木あきえさん(MC)

授乳だけが安心につながるわけではなく、肌の触れ合いや、不安なときに応えることが大事なんですね。

すくすくファミリー

愛情や安心感という意味で、子どもは求めているんですね。うちの子は、もうすぐ卒乳すると思いますが、そのあともしっかり抱きしめて、たくさんスキンシップして、「大好きだよ」と伝えていきたいです。

すくすくファミリー

おっぱいだけが安心材料になっていると思い込んでいたかもしれません。抱きしめることも大事なんですね。保育園に預けている時間が長いので、帰ってきたらいちばんにギュッてしてあげたいと思います。


専門家からのメッセージ

おっぱいの卒業は人それぞれ。大変さを含めてたのしんで

市川香織さん

おっぱいの卒業には、「これだけやれば大丈夫」という近道やマニュアルもありません。子ども一人一人に個性があるように、おっぱいの卒業もそれぞれ違うと考えてください。大変なこともありますが、それを含めてたのしめたらいいなと思います。

おっぱいの卒業は、助産師にも相談できる

市川香織さん

順調に卒業できても、母乳が出過ぎて乳腺炎になるなど、卒業のあとのケアが必要になる場合もあります。そんなときは助産師を利用してみましょう。助産師は、生まれてすぐのスタートアップをサポートすることが多いのですが、おっぱいの卒業についての相談もできます。ぜひ活用してみてください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです