「寝かしつけにどうしても時間がかかる」「どうして夜泣きするのかわからない」など、赤ちゃんの寝かしつけ・夜泣きについて、専門家と一緒に考えます。夜泣きのしくみや、寝かしつけのコツも紹介します。

赤ちゃんの寝かしつけと夜泣き※すくすく子育て「赤ちゃんの寝かしつけと夜泣き」より

専門家:
黒田公美(理化学研究所 脳神経科学研究センター)
井桁容子(元保育士)

今回のテーマについて

赤ちゃんは最初から上手に眠れるわけではない

コメント:黒田公美さん

大事なことは、赤ちゃんが最初からうまく寝たり起きたりできるわけではないことです。だんだん上手に眠れるようになり、そこには大きな個人差があります。

主体的な経験の積み重ねが、自分の体の状態を知ることにつながる

コメント:井桁容子さん

自分の体は、「自分のこと」としての経験を積み重ねていかないと、わからないですよね。例えば「あんよ」のときには、転びながら上手になっていきます。眠ることも同じです。そのような時期だと考えましょう。


寝かしつけに時間がかかる… どうしたらいい?

毎日、娘(6か月)の寝かしつけに時間がかかって、やり方が間違っているのではないかと不安です。いつも、18時半にはお風呂をすませて、授乳し、ぐずりはじめたら寝かしつけです。ねんねの儀式として絵本の読み聞かせをしています。
でも、「寝てくれたかな」と思って電気を消すと、泣きだします。そこから、音楽をかけたり、子守歌を歌ったり、トントンしたり。40分ぐらいかけて寝かしつけても、そこから40分後ぐらいに、なぜか目を覚ますこともあります。そうなると寝かしつけのやりなおしです。
(お子さん6か月のママ)

子どもがほっとできるポイントを探すことは大事

回答:井桁容子さん

子どもによって、リラックスするポイントが違います。みんなが同じ通りに寝るわけではないのです。音楽でリラックスできる子もいれば、音楽はだめで、だっこがいい子もいます。絵本や子守歌、トントンするなど、一生懸命にお子さんがリラックスして、ほっとできるところを探しているのは大事なことだと思いますよ。

"ほっとする"経験の積み重ねによって、疲れている体の状態を知っていく

回答:井桁容子さん

子どもは、“ほっとする"経験の積み重ねによって、"疲れている"体の状態を知っていきます。疲れていることに気づく経験が大事です。毎晩それが何かを探っているようなものなんです。
例えば、赤ちゃんが目をこすったりあくびをしたり、「疲れてきたな」と信号を出してくれたときは、「眠くなってきたね」のように声をかけてみてください。「この状況は『眠くなってきた』ということなんだ」と、"眠たい"状態を学んでいくことができます。

眠りに入るときは、少し体から熱を逃がす

回答:黒田公美さん

赤ちゃんに限らず、大人も眠りに入るときには、少し体から熱を逃がす必要があることがわかっています。特に、赤ちゃんが少し汗ばんでいたり、暑そうな場合は、靴下を脱がせるなど、服や布団を調節して、少し熱を逃がしてあげることが、眠りにつきやすくなるポイントです。
冬場などは、布団から出ている赤ちゃんの手が少しひんやりしているぐらいが正常です。ぬくぬくの肉まんのような温かさでは暑すぎる可能性があります。汗をかかない程度に保温することが大事です。

寝ついて1時間ぐらいは汗をかく

回答:井桁容子さん

寝ついてだいたい1時間ぐらいはとても汗をかきますよね。それまでは、あまり布団をかけなくてもいいぐらいです。そのあとから布団をかけてあげると、よく眠れると思います。

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赤ちゃんの夜泣き、どうしたらいい?

次男(5か月)は、ひと晩のうちに何度も夜泣きします。多いときは1時間おきです。長男のときはあまりなかったので、どうしていいのか戸惑っています。
改善するために、寝かしつけの授乳をミルクにかえるなど、いろいろなことを試してみましたが、通用しませんでした。泣きたいだけなのか、おなかがすいて泣いているのか、どうしていいのか悩んでいます。
(お子さん6歳・5か月のママ)

赤ちゃんは睡眠と覚醒のリズムを学んでいる途中

回答:黒田公美さん

脳には睡眠中枢と覚醒中枢があり、それぞれが切り替わることで、睡眠から覚醒、覚醒から睡眠へ移っていきます。赤ちゃんは、睡眠と覚醒のリズムを学んでいる途中で、スイッチのように切り替えることがうまくできないと考えられています。うまく切り替えできないときに嫌な感じがして泣いてしまう。眠いのに寝られなくてぐずったり、すっきり起きられなくて泣いたりする子もいます。赤ちゃんは練習している途中なので、少し長い目でみましょう。

泣くことは赤ちゃんの発信

回答:井桁容子さん

泣くことは、「おなかがすいたよ」「のどが渇いたよ」「暑いよ」「夢を見たよ」など、赤ちゃんの発信なんです。赤ちゃんが泣くと、大人は泣きやませたくなりますが、何の発信なのか少し察してみてください。そうすることで、だんだん「こうするとよく寝る」といったことがわかってくると思います。それまでの折り合いのつけ方が大事かもしれません。

ネットで、泣いても放置することによって赤ちゃんがよく眠れるようになるという、ねんねの練習法をみたのですが、効果はあるのですか?

子どもによって合う・合わないがある

回答:黒田公美さん
 
最近の研究によると、効果がある子どもがいる一方で、合わない子もいます。いちど試してみるのもいいでしょう。親によっては、泣かせたままにすることが罪悪感やストレスになる場合もあるので、方法に固執せずに「自分には合わなかった」とあきらめてもいいと思います。

夜まとめて眠れるようになるのは、いつごろからですか?

2歳半ぐらいになると、夜泣きは減ってくる

回答:黒田公美さん

夜泣きの悩みは、9か月~1歳半ぐらいのお子さんでとても多いようです。この時期の睡眠の脳波を調べた実験では、非常に早いサイクルで夜中に何回も起きかけていることがわかっています。これがだんだん安定して、睡眠が浅くなってきたところで起きるまでにならず、また眠りに戻れるようになります。2歳半ぐらいになると、夜泣きは減ってくるでしょう。

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おすすめの寝かしつけ法は?

パパたちから、「パパではダメで、ママでないと寝てくれない。ママの負担になってしまう」「どうやって寝かしつけたらいいのか…」といった声が寄せられました。おすすめの寝かしつけの方法はありますか?

おすすめは「だっこして5分間歩く」

回答:黒田公美さん

赤ちゃんが泣いて手がつけられないときは、ひとつの方法として「だっこして5分間歩く」を試してみてください。
哺乳類の赤ちゃんには、「輸送反応」といわれる、親に運ばれるときにおとなしくなる反応があります。例えば野生動物の親は、自然界の脅威から逃れるためなど、目的があって子どもを運びますが、泣いたり暴れたりしていると困ります。子どもは運ばれていることがわかったら、おとなしくなるわけです。人間の赤ちゃんにも、そのような反応があることがわかっています。効果が出やすいのは、体重があまり重くない生後1か月~8か月ごろまでです。
※生後1か月以内や筋力が弱いなど、体の心配がある赤ちゃんには行わないでください

だっこ歩きのポイントはありますか?

「目的地まで移動する」気持ちで。赤ちゃんは見ない

回答:黒田公美さん

「あやすため」に歩くのではなく、「理由があって移動する」イメージです。例えば、「用事があって駅まで行く」という気持ちで、一定のペースを保ちながら、できれば止まらずに、5分間歩きます。もちろん、速く歩くのは危ないので注意しましょう。例えば部屋の中を周回するなど、回転するように歩くと、一定のペースを保ちやすいでしょう。
もうひとつのポイントは、できれば赤ちゃんを見ないこと。つい「もう寝たかな」と赤ちゃんを見てしまいがちです。そのとき立ち止まったりすると、赤ちゃんも見られていると気づきます。親の注意が歩くことに向いていないこともわかるのです。

赤ちゃんのおなか・胸・頭を、体にぴったりくっつける

回答:黒田公美さん

赤ちゃんの抱き方にもコツがあります。だっこするときに、赤ちゃんのおなか・胸・頭まで、体にぴったりくっつけることが望ましいですね。歩くときは、赤ちゃんの頭がぐらつかないようにしてください。特に、首がすわっていない時期は、しっかりと後頭部を支えて、頬を胸か肩に乗せ、もたせかけるようにして歩くといいでしょう。縦抱きのほうが密着する面積が大きくなりやすいので、理由がなければ、最初は縦か斜めぐらいで抱くとよいでしょう。体にぴたっとついている感じを大切にしてください。

5分間歩いても泣きやまない場合は、どうすればいいですか?

10分まで延長してもいい。それ以上は、ふだんと違う様子がないか確認

回答:黒田公美さん 

10分ぐらいまでは延長してもいいでしょう。日常の中でも、それぐらいだっこして歩くことがありますよね。それでも泣きやまない場合は、何か理由があるのかもしれません。いったん歩くのは休んで、体温を測ってみるなど、赤ちゃんにふだんと違うところがないか確認したほうがいいと思います。

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だっこで泣きやんでも、布団に下ろすときに泣いてしまいます。何かコツはありますか?

布団に着地するまでは体を密着させて、ことばをかけながら

回答:井桁容子さん

布団に下ろすときは、私もたくさん失敗した経験がありますよ。まず、赤ちゃんは密着しているのが安心なんです。頭が先に下がってしまうと不安になるので、お尻から下ろします。それから、胸をつけたまま、「ずっといるよ」と、だんだん背中を下ろしてあげます。体を離すとき、赤ちゃんは手がふわっとなって不安になります。赤ちゃんの両手をやさしくおおうように手をあわせて、「大丈夫よ」「気持ちいいね」と声をかけながら、だんだん離してあげます。親が「大丈夫かな」とどきどきしてしまうと、赤ちゃんに伝わってしまうこともあります。

赤ちゃんが自分からぐっすり眠ってくれるのが理想ですが、ぐっすりねんねに大切なことはありますか?

昼間を気持ちよく過ごすことが、夜の"ほっとする"時間につながる

回答:井桁容子さん

昼間の時間を大事にしましょう。昼間を気持ちよく過ごしてメリハリをつけてあげると、気持ちよく疲れて、夜の"ほっとする"時間につながります。この繰り返しの中で、夜がだんだんと気持ちいい時間になるでしょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです