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NHK横浜 マンション防災ってどうやるの?

「カナボー」第2弾 横山清文さん
  • 2022年12月21日
横山清文さん

あなたの身近な地域で、防災・減災に取り組む人をお伝えする「カナボー神奈川防災)」第2弾は、横浜市戸塚区の防災士、横山清文さん
人生の半分以上の間、“防災に無関心”だったのに、いまではマンション防災のプロに。
無理なく続けられるマンション防災の秘訣を聞きました。

教えて!マンション防災の秘訣!

防災士の資格を持つ横山さん

横浜市戸塚区、富士山を望むマンションで防災リーダーを担う横山清文さん(64歳)。
平成20年、住民とともに自主防災組織を立ち上げ、現在も運営しています。
シンプルで実践的な組織運営を学びたいと、いまでは、ほかのマンションから問い合わせや見学が来るようになりました。

長く続けられる自主防災組織とは?

横山さんの住むマンション

横山さんのマンションでは、自治会の下部組織として、防災委員会を設置しています。
11人のメンバー全員が住民です。
この組織を作るとき、横山さんが提案した、ある決めごとが大事だったといいます。

秘訣1 任期を決めない

横山さん

当時、自主防災組織を作る条件として、「任期を決めない」ことにしました。
自治会でよくある1年ごとのメンバー交代では、スキルアップができないと。
やる気のある人が長く活動できて、切れ目なく活動を続けられてます。
さらに、住民どうしでコミュニケーションを取る機会が増え、趣味の友達作りにもつながりました。

秘訣2 できないことはやらない
さらにもう一つ、大事なことがあるといいます。

横山さん

できないことまでやろうとしない」です。
災害が発生したときには、メンバーの多くが仕事で外出している可能性もあります。数人でも集まればすぐにできることを活動の対象にしました。

活動のポイントは?

横山さんのマンション防災活動の基本方針です。

横山さんは特に、「自助」と「共助」の明確化が大事だと訴えます。限られた人数で活動せざるを得ない状況を想定し、「共助としてやるべきこと」と「自助とすべきこと」を分けました。

共助(防災組織でやること)
・火災発生や建物被害、エレベーター閉じ込め者の有無確認
・要援護者の安否確認
・共同視聴のテレビ放映
・汚物置き場用テントの設置(断水時)など。

一方で、水や食料の備蓄・簡易トイレや非常灯の準備などは、住民それぞれが自助で行うこととしています。

横山さん

防災組織では、命に関わることや個人ではできないことを最優先に行います。一方、自助で出来る部分は自助で行ってもらいます。役割を明確にすることで、私たちも無理な活動が出来ます。住民に対しても、平常時に必要な備えについて、具体的に呼びかけることが出来ます。

年2回の防災訓練

布製担架での搬送訓練

横山さんのマンションでは、防災訓練は年に2回、春と秋に行ってきました。
特に秋の訓練は、負傷者の搬送や、停電に備えた発電機やテレビの動作確認などを行います。
災害時に行う活動が実際に出来るかどうかを検証する大切な機会です。
発電機については、誰でも使用できて、取り扱いも簡単なカセットボンベで使用できるものを用意するなど、住民目線での改善も進めてきました。

ガス式発電機

東日本大震災で役立った備え

立ち上げから3年後の平成23年、東日本大震災が発生しました。
横山さんのマンションでも大規模な停電が発生、水道も止まりました。
帰宅困難者も多いなか、発災直後に集合できた防災組織のメンバーは3人だけでしたが、備えが生きました。

東日本大震災時の安否確認ボード

建物やライフラインの被害状況をホワイトボードで情報提供したほか、安否確認ボードを用いて、住民の安全確認を実施。
このほかにも、発電機を使って建物内の照明やテレビもつけました。
家族が帰宅しない高齢者や、子どもを預かるなどの対応も行ったといいます。

横山さん

少ない人数でも活動できることが実証できました。事後のアンケート調査でもテレビや照明が、住民に安心感を与えたことがわかりました。

活動はマンションの外へ

横山さんの防災活動は、マンションの外にも広がっています。
防災組織の経験や実績を聞きつけた、ほかのマンションからの問い合わせが増えたのです。
実際に見学に訪れる人や、講演を依頼されることもあります。
横山さんは、さらに防災への知識を深めようと、防災士の資格も取得、
多くのマンション住民に、自主防災活動のポイントを伝えてきました。

コロナ禍やなり手不足の課題も・・・

立ち上げから15年目、シンプルで実践的な防災組織は順調に運営できているものの、課題もあるといいます。
まだまだ64歳と体の動く横山さんですが、メンバーの高齢化が進んでいます。
体力のある、若い世代にも参加してもらい、世代交代を進めたいといいます。
またコロナ禍で、年に2回の防災訓練のうち1回は中止にせざるを得ないなど、活動の難しさも感じています。

消火訓練の様子

最後に、横山さんに、マンションに住む人たちに伝えたいことを聞きました。

横山さん

マンションは一戸建てよりも比較的頑丈で、恵まれた環境です。
だからこそ、在宅避難ができる備えが大切だと思います。
家具の転倒防止や食料・水の備蓄、簡易トイレの準備などで、
命を守ることが出来るので、ぜひ備えをしてほしいです。

横山清文さん(64)
日本防災士会神奈川県支部防災士。マンション自治会防災委員会 副委員長。
防災に無関心だった過去がありながらも、引っ越しをきっかけに、マンション防災に携わることに。いまでは講師として、マンションの自主防災組織運営について講演活動を実施。

  • 山田友明

    横浜放送局

    山田友明

    2015年入局。長野局を経て横浜局へ。2歳の子育てに奮闘中。

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