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進む中野大改造 中野サンプラザ跡地に超高層ビル 想定外の事態も

不動産のリアル(25)
  • 2023年11月8日

惜しまれながら50年の歴史に幕を下ろした東京・中野区の「中野サンプラザ」。
跡地には、オフィスや住居、商業施設などが入る地上61階建て、高さ262メートルの超高層ビルが建設される計画です。
中野の街を大きく作り替えることになる今回の再開発計画ですが、今、想定外の事態が起きています。
※私たちは「不動産のリアル」と題して、空前の高騰が続く不動産事情を取材しています。皆さんの体験や意見をこちらまでお寄せください。
(首都圏局 不動産のリアル取材班/記者 牧野慎太朗)

中野大改造 進行中

今、東京都心で進められる数々の再開発事業。
なかでも100年に1度とも言われる再開発計画がJR中野駅周辺です。こちら中野区の作成した資料ですが、中野駅周辺で11のまちづくり事業が進められているのがわかります。中野駅の駅舎は一新されて5階建てに。駅前には大きな広場が設けられるほか、区役所も近代的なデザインで新しく建て替えられ、周辺にはマンションなど高層の建物が建ち並ぶことになります。

“サンプラザのDNA引き継ぐ”シンボル拠点

この大規模なまちづくり事業の中心が、区民や多くのアーティストに愛された「中野サンプラザ」の跡地利用です。
中野区は「『中野サンプラザ』のDNAを継承した新たなシンボル拠点をつくる」などと表明し、最大7000人を収容できる多目的ホールを備えた低層棟と、商業施設やマンション、オフィスが入る高層棟を建てる計画を打ち出しました。

高層棟は地上61階建て高さは262mで、東京都庁より高い超高層ビルが中野駅前に誕生することになります。

建設費250億円増加 物価高で

しかし、いま再開発計画に想定外の事態が起きていました。それは資材価格や人件費の高騰です。今の計画の場合、1年前の試算より、建設費が約250億円も増加する見通しになったことが明らかになりました。これにより中野サンプラザの跡地だけでも、事業費は約2500億円にまで膨らむことになります。

この250億円もの建設費をどう工面するのでしょうか。いま中野区が事業者側からの提案を受けて、いま検討されているのが、高層棟の商業施設を減らして、オフィスや住宅スペースを増やす案です。通常、再開発はオフィスや住宅を売却するなどした収入で、多額の建設費を捻出します。つまり、収益性の高いオフィスや住宅スペースを増やすことで、新たな収入を確保したいという思惑があります。

収益性の向上は大切だけど…

具体的には、5階分あった商業施設を1階分(約5000平方メートル)減らして、オフィスを1階分増やす想定だといいます。しかし、商業施設にはもともと「中野独自の文化を感じられる多様な店舗」などを入れて、にぎわいを創出する意図がありました。収益性は確保できたとしても、施設の魅力そのものが失われることはないのか、危惧されます。

さらなる補助金も検討

さらに、懸念されるのが区からの補助金です。
中野区は去年12月時点で約430億円(総事業費の約2割)の補助金を見込んでいました。
しかし、建設費が上がったことにより、別の補助金の活用も検討しているということです。
これらの懸念について、区の担当者に直接聞いてみました。

中野区 中野駅新北口駅前エリア担当課長 小幡一隆さん
「建設費が増えた影響は大きく、計画の変更などが必要になっているので対応には苦慮しています。商業施設の床面積は減ることになりますが、別の場所に区民が交流できるスペースを確保して補うことも方法の1つとして考えています。当初から4割をオフィス、4割を住宅、残る2割をホールも含めた商業施設とする割合で事業提案を受けていて、現状まだこれは守られている状況ではあります」

事業費増加も懸念

実は、きょう(11月8日)開かれた区の都市計画審議会でサンプラザ跡地の再開発に関する計画が了承され、事業が本格的に動き出すことになりました。今後は、区長の決定などを経て、早ければ来年(2024年9、10月ごろ)には工事が着工され、2028年ごろの完成を予定しています。
しかし、物価高騰が続くなか、この1年間で250億円も建設費が増えたことを考えると、今後さらに膨らむ可能性も排除できません。こうした懸念についても、担当者に聞きました。

小幡一隆さん
「そうならないようにするのが1番です。中野駅前の拠点であり、中野サンプラザのDNAを継承し、未来に続く持続可能性の高いまちづくりとなるよう進めていきたいと考えています。そのため、今後、建設費がさらに増加して、さらなる計画変更が必要になったとしても、多目的ホールの設置や4:4:2のバランスの取れた割合は守っていきたいと考えています」

身近な再開発について意見を

大阪・関西万博でも建設費の高騰が大きな話題になりました。今回の中野だけでなく、各地で進む再開発の現場も例外ではないようです。皆さんの街ではいかがでしょうか。私たちは各地の再開発の現場を取材していきます。
ぜひみなさんの体験や意見をこちらまでお寄せください。

  • 牧野慎太朗

    首都圏局 記者

    牧野慎太朗

    2015年(平成27年)入局。宮崎局・長野局を経て2022年から首都圏局。不動産取材を担当。

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