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地方議員の活動は?兼業は可能?報酬は?調べてみた

地方議会のリアル(9)
  • 2023年10月26日

地方議員ってふだんどんな活動をしている?皆さん何と答えますか?

私(記者歴15年)も長く議会の取材はしていますが、議会のない時期、議員がどんな活動をしているのか、さらに報酬はどのくらいなのか、具体的にわからないこともあります。そこで、さっそく取材を進めてみました。
(首都圏局/記者 鵜澤正貴)

地方議員の仕事は?

今回も、まず街の人たちに「地方議員の仕事について知っていますか?」と埼玉県内で聞いてみました。

20代女性

まったくイメージがつかないです。自分の今後の生活に直結することなら、気にするんですけど、なかなかそうは感じられないんですよね。

30代男性

駅でチラシを配っていらっしゃるのは見ます。あと、地元の行事に参加されている方もいますね。

20代男性

よく知らないです。何か遠くの出来事という印象です。国会はニュースで多少は見ますけど。

70代男性

はっきり言って、あまり知らないですね。見かけるのは選挙の時だけです。自分の商売を持っている人はそっちをやっているのかなと。お百姓の方もいるしね。議員報酬だけじゃ食えないんじゃないかな。

議会がない時の地方議員の仕事や報酬などについては「よく知らない」という答えが返ってきました。

議員は兼業可能?報酬は?

こちらでわかるものを、まずは調べてみました。
議員は「兼業」できるのか、についてです。
地方自治法を見た上で、総務省にも問い合わせてみると、議員は、自治体と一定の請負関係にある場合の兼業については、法律で禁止されていました。しかし、禁止事項に該当しなければ、自営業や農業など兼業は可能だということです。
また、議員の報酬についても調べました。
「全国市議会議長会」の調査では、去年の時点で全国の市議会や区議会の議員の平均は月額約42万3000円でした。一方、町議会、村議会の議員はもっと低く、「全国町村議会議長会」の調査で、全国平均が月額21万6902円となっていました。

議員は議会以外何を?日高市議会議員の活動に密着

ただ、街の声に多かった「議員が議会活動以外に何をしているのかわからない」という疑問は残ったままです。どうしたものかと思っていたところ、インターネット上のホームページで、議会が開かれていない時の自身のスケジュールを公開している地方議員がいました。
そこにはこう書かれていました。

松尾議員のホームページより

「市議会議員って毎日何してるんですか?」
とってもよくいただくご質問です。
かなり親しい方からもいただくので、やっぱり見えづらいのかなぁ…と思い、私の日々のタイムスケジュールを描いてみました!

そこで、この発信をしている埼玉県日高市議会の松尾万葉香議員(無所属・2期目)に連絡を取ってみました。

埼玉県日高市議会 松尾万葉香 議員
「知り合いと世間話をしていると、市議会議員ってふだん毎日、市役所にいるのとか、パソコンを使うことってあるのとか、あぁそっかイメージできないよなって、しづらいよなと思うことが結構ありました。私自身も議員になる前、民間企業に勤めていた時は想像できていなかったですね。それで、どうしたらもう少し私が毎日何をしているか、イメージしてもらえるかなと考えました」

活動に同行 日曜日は行事に参加

日高市議会は9月議会を終え、閉会中。私たちは議会以外の議員活動を知る良い機会だと思い、松尾議員の日々の活動を見せてもらうことにしました。

「土日は、夫と交代で子どもを見て、半分くらいは仕事に充てています」
とブログに記していた松尾議員。直近の日曜日の予定を聞くと、「地域の体育祭に参加する」とのこと。
「あいさつをするんですか?」と尋ねると、「いや、長めのあいさつの時間はないと思います。『よろしくお願いします』くらいはあるかもしれませんが。綱引きとか玉入れの競技に出るんじゃないかな」と答えました。

「競技にも参加するんだ…」と思っていたところ、この日はあいにくの雨で体育祭は中止に。しかし、これで休みということにはならず、松尾議員、近くで開催される地域のマルシェに参加しました。各ブースにあいさつして回り、名刺を手渡す場面もありました。

松尾議員
「どういうお仕事ですか、どういうお店ですかとか、どちらからですかとか聞く中で、私もつながりができます。そうすると何かご相談があった時に、これならあのお店ができるんじゃないかなとか、そうやっておつなぎすることもできるので、ありがたい場だなと思います。別に今困ったことがなくても、何か暮らしの中で困った時に、ああ、あの時しゃべった人、議員だったな、ちょっと相談してみようかなと思っていただけるといいなと感じています」

午後は体育祭関連の懇親会にも出席。
休日であっても地域のイベントに顔を出すことは議員として欠かせないといいます。

平日は市民と対話 新たな気づきも

一方、平日はどんな活動をしているのでしょうか。
この日の午前は小学生の息子の学校関連の用事があったため、午後から本格的に活動開始。
松尾議員が訪ねたのは、地域で長年、ボランティア活動に関わってきたという80代の元教師の男性のところです。

話し合ったテーマは、地域に残る井戸の災害時の利用や街路樹の保護、さらに地元ゆかりのアスリート支援などさまざまでした。

こうした地域の実情に詳しい人たちを定期的に訪ねて、課題を聞き取ります。

さらに、このあと、地元のカフェで飲食しながら、市民とも対話。月に1、2回、こうした機会を作っているということです。この日は10人弱が参加しました。

ここでは介護や保育の現場の人手不足の問題や処遇改善、免許を返納した高齢者の移動支援、自治会のあり方、選挙制度や議会の改革などについて話し合いました。松尾議員によると、こうした対話をきっかけにして、地域の高齢者を支えるボランティア活動について、もっと市として支援できないかと議会で取り上げ、議論につながったこともあったということです。

参加した40代女性
「以前は政治に興味がないというか、自分事のようには思えなかったんですが、これなら私でも参加できるなと思いました。暮らしの中で“これってどうなんだろう”と感じる小さな疑問を、議員からお茶を飲みながら聞けるというのは、いい場なんじゃないかなと思います」

松尾議員
「皆さん、日々のお困り事と政治というのがつながっているという実感が持ちづらいのかなと思っています。こういう場で、ああでもないこうでもないとワイワイしていると、私もいろいろと気づくことやひらめくこともあって、私自身、とてもいい刺激になっています」

家では母親 夕食は家族と

夕方には帰宅して夕食を準備。夫や子どもと一緒に食卓を囲みました。

ただ、この日の活動はこれで終わりませんでした。このあと、保護者から学童保育の課題について聞き取るミーティングがあり、手早く食事を済ませていました。

取材した限りでは、議会以外にもいろいろな活動があり、家庭との両立もなかなか大変な仕事だなという印象を受けました。そんな感想を率直に伝えると、松尾議員はこのように語りました。

松尾議員
「まだまだ勉強不足だなと思うこともあって、大変だとは感じています。でも、どの仕事も大変ですし、おかげさまで日々、充実しています。
自分の予定はある程度、自分で決められますし、子どもを見る時間も夫と調整できているので、その点はありがたいなと思います。
地域づくりって、受け身でいるよりも関わった方が楽しいんですよね。そういう雰囲気や動き、制度、仕掛けをつくっていきたいと思っています。私たち議員ががんばらないといけないところです」

取材後記

今回の取材記事、皆さんはどのような感想を持ったでしょうか。あくまで1人の地方議員を追っただけですので、これが多くの議員に当てはまるかどうかはわかりません。
自営業などと兼業している人もいますし、政党に所属している議員であれば、政党に関わる仕事も多くあるでしょう。

私たちは今後も「地方議会のリアル」の取材を続けます。
皆さんが日頃、議会について思うこと、または経験したことを、こちらまでお寄せください。私たちは皆さんの声をもとに取材したいと思います。

  • 鵜澤正貴

    首都圏局 記者

    鵜澤正貴

    2008年入局。秋田局、広島局、横浜局、報道局選挙プロジェクトを経て首都圏局。

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