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「星景写真」星ぐるぐる映像を撮ろう!~あなたのカメラで星降る街を~

NHKカメラマンが撮り方をお伝えします。
  • 2023年12月25日

 

冬の星空を観察、撮影する小学生、神田琴音さんを取材し、12月21日に「首都圏ネットワーク」で放送した「夜空に夢を」、ご覧いただけましたでしょうか?  
そのコーナーの中で星がぐるぐると動いている動画がありましたけど、この記事ではどうやって撮ったのかお伝えしたいと思います。

お気楽な「星ぐるぐる写真」撮影の流れ

そろそろ寝ようかな・・・でも星ぐるぐる写真でも撮ろうかな・・・と思ったら

①ベランダに出て空を見る。あ、星が見えている・・・  
②天気予報を見たら、夜間快晴じゃん  
(WEBの天気予報で星空指数などを参考に)  
③デジタルカメラのバッテリーは余裕ありそうだな、よし、やるか・・・  
④カメラを  
「シャッタースピード8秒」「ISO400」 「絞り4」に設定  
⑤ホワイトバランス蛍光灯、手ぶれ補正オフ、フォーカスをマニュアル  
三脚にカメラをセットし空の面積を8割から9割程度にして、遠くの建物にピントを合わせて一枚撮影  
⑥明るさや色などを確認し、適宜調整  
⑦シャッタースピードが8秒でよければインターバル撮影を9999枚、撮影間隔9秒にセット  
⑧三脚をもう一度確認。  
⑨撮影開始  
⑩就寝  
⑪起床  
⑫バッテリー切れのカメラ回収

というわけで、この「睡眠撮影法」を実行すれば撮影は楽ちんです。

次に合成、動画作成

①撮れた数百枚以上の写真の中に夜が明けてしまったカットがあったら削除  
②撮り始めのカットでカメラが動いていたらそれも削除  
③パソコンにインストールした「比較明合成(ひかくめいごうせい)」ソフトに写真データを入れ、合成を実行  
④しばらく待つ、あるいはほかのことをする  
⑤ぐるぐる写真とぐるぐる動画の完成です。  
仕事の場合は機材の管理などに気を遣いますが、  
趣味の場合は本当にこんな感じで終了です。

以下長くなりますが、詳しく知りたい方は読んでください。

「星景写真(せいけいしゃしん)」を撮ろう!

「星の写真」と一言で言いますが、星雲や惑星をアップで撮る写真を「天文写真」、星座を撮るのを「星野写真(せいやしゃしん)」、そして、地上の風景とともに星を撮る写真を「星景写真」などと呼ぶことが多いのでここではその言葉を使いたいと思います。

KAGAYAさんの作品、地上の風景とともに星を撮った写真はとても美しい星景写真ですよね。

KAGAYAさん撮影

スマートフォンでもこんなにきれいに撮れる!!

星景写真を撮るのに必要なのはカメラのほかに三脚です。番組で神田琴音さんにさいたま市青少年宇宙科学館の小林幹也さんがスマートフォンを使った撮り方を教えていましたが、小林さんに伺うまで、三脚を用いればスマートフォンのカメラでも、これほどまでにきれいに星景写真が撮れるとは知りませんでした。  
スマートフォンで「ナイトモード」あるいは「夜景モード」などというのがあれば、それで撮れます。こうしたモードはシャッターを開けておく時間を長くすることで、星の光をしっかりとセンサーに受け入れることができます。小林さんはスマートフォンでびっくりするほどきれいな星景写真を撮っています。  
きれいに撮れるかどうかは、星空のきれいなところに行く努力や構図を整えるセンスが必要ですが、機能としてはスマートフォンでも十分撮れるんですね。

スマートフォンで撮影

デジタルカメラで撮る

さて、レンズ交換式カメラでの星景写真の撮り方について、ですが、機種によってさまざま設定方法が異なりますし、撮る人によって考え方も異なると思いますが、私が撮った方法を記します。

初めて撮る人へ

初めて取り組む人向けですので、説明がやや粗いことをご容赦ください。  
街の明かりとともに星を撮ると言っても、あまりにも街が明るいと撮影の難度は上がります。高層階に住んでいるのであれば自分のマンションのベランダがいいポジションかも知れません。私はマンションの管理組合の許可を得て、共用部廊下で撮影したこともあります。

撮影モードをマニュアル(Mモード)にします。

モードはマニュアル

これによって、写真の明るさがカメラ任せにならず、完全に自分でコントロールできるようになります。  
ストロボはOFF、でシャッタースピード8秒、

シャッタースピードは8秒

ISO400、

ISOは400

絞り4に設定をします。

絞りは4.0

オートフォーカス、オートホワイトバランスなどの機能をすべてマニュアルにします。  
手ぶれ補正も切ってください。

オートフォーカスはOFF

ここでは「長秒時NR」というのもOFFにしておきましょう。   
ピントを星ではなく、遠くのビルのどこかに合わせます。  
ホワイトバランスは「蛍光灯」に設定します。

ホワイトバランスは蛍光灯

一枚の星景写真を撮る

三脚にカメラを固定します。  
セルフタイマーを使ってシャッターを押します。シャッターを押したときの手ぶれを防ぐためです。  
できあがった写真を見ます。  
どうでしたか?星と地上の風景は両方写ったでしょうか?  
街なかですと満天の星というのは厳しいとは思いますが、木星やシリウスなど明るい星は点として写っているでしょうか?  
「木星やシリウス」と星の名前を使ってしまいましたが、星景写真を始めるに当たっては、星の名前を知らなくても気にしなくていいと思います。撮り続けていれば自然と覚えていきますので。  
全体として暗いときはISO感度を800、1600とあげてみてください。  
明るいときには感度を200,100と下げてみてください。  
また、シャッタースピードの8秒を15秒に遅くしていけば明るくなりますし、絞りの数値を4から小さい数字に変えていっても明るくなります。  
シャッタースピードと絞りとISO感度の3つの要素で写真の明るさは決まります。  
私がさいたま市や行田市などで星景動画を撮影したときの設定は、主に上記の  
シャッタースピード8秒、ISO400、絞り4でしたので、似た環境でしたらこれを基本に上下することで星がなんとか写り、街や建物がいい明るさでうつるのではないかと思っています。  
写真の色がイメージと異なる場合はホワイトバランスを「蛍光灯」から違う色に変えてください。

撮ってみてください

慣れればそれほど難しくはないので、星空の広がる景色にカメラを向けシャッターを押してみてください。

星を軌跡に

街の中での撮影で、星の光と街の明かりをバランスよく撮れましたか?  
写真を見ても実際には街の明かりが強くて、なかなか星を認識できないと思います。  
こんなときに星の動き(日周運動)を軌跡にして撮る方法があります。  
北極星を中心にぐるぐる星が回っている様子の写真を見たことがあると思います。  
この、ぐるぐる方式なら、晴れてさえいれば街の光と星を両方写真に納めることができます。  
ぐるぐる写真を見せると「シャッター何時間開けっぱなしにしたの?」等と聞かれる事が多いのですが、その方法では街での星ぐるぐる写真は決して撮れません。

星ぐるぐる写真は「比較明合成」で撮ろう

ではどうするか、というと上で説明した「1枚の写真を撮る」方法で数百枚、数千枚と撮影し、それを合成して「星ぐるぐる写真」にします。

撮影の際には

数時間にわたり数百枚以上撮る撮影にはインターバル撮影という方法を用います  
これはカメラによって機能が内蔵されているものもあり、されていないものもあります。  
されていない場合はインターバルタイマーという装置を使います。

気をつけること

長時間、カメラが動かないようにするために三脚の固定はしっかりと行ってください。  
高級な三脚を使うことを勧めているサイトも見受けられますが、私の場合、古いビデオカメラで使っていたかなり華奢な三脚を用いても問題なく撮れました(風のない夜でしたが)。そして「1枚の写真を撮る」で説明したように「オート」と呼ばれるすべての機能を切ることを忘れないでください。  
ここを失敗すると大量の写真の明るさが統一されなくなる恐れがあります。  
私の場合は「自動水平機能」を切り忘れていたために、逆に一枚一枚ごくわずかに水平がずれてしまい、悲しい思いをしたことがあります。  
まず、一枚試し撮りをしてみましょう。  
シャッタースピード8秒、ISO400,絞り4です。  
星が数個写っていますか?地面の明るさもいい感じですか?水平は合っていますか?  
よければ撮影間隔(インターバル)を9秒に設定しましょう。シャッタースピードが8秒なので8秒間シャッターが開いて写真を撮り、一秒間隔を開けてまたシャッターが8秒開くという設定になります。9秒に一枚ずつ撮影していく設定です。

■明るさを調節するためにシャッタースピードを変更する場合■  
シャッタースピード4秒 → インターバル 5秒  
シャッタースピード15秒 → インターバル17秒  
シャッタースピード30秒 → インターバル33秒  
枚数は一番多く設定します。私のカメラだと9999枚撮れるのですが、9999枚取る前にバッテリーが空になっています。つまり、バッテリーがなくなって撮影終了と言うことになります。

今回の設定

私が趣味で星ぐるぐる写真を撮るとき、自宅マンションのベランダや、実家の庭が多く、その場合は外に置いたカメラを置き去りにして寝て、朝回収します。安全な場所があればこの方法がおすすめです。  
そういった場所がない場合は撮影している間はカメラから離れられません。  
星の移動は北極星を中心に一時間に15度です。そういったことを目安に撮影時間を考えてもいいですが、まずは1時間でも連続撮影を試してみることをおすすめします。  
長さに関しての感覚がつかめると思います。  
撮影して寝て、朝に回収するのが楽でおすすめなので、その方法で撮ったとしましょう。  
朝、ベランダのカメラのメモリーカードに500枚とか1000枚とか、バッテリーがつきるまで撮リ続けられたほぼ同じ写真が入っていると思います。  
連続撮影された写真のうち、最初の数枚はテスト撮影やブレがあったりするので要チェック、最後のほうに夜が明けて明るくなっているカットがあるかどうかも要チェックです。

比較明合成写真を作る

こうした大量の写真から星ぐるぐる写真を作るには写真加工ソフトで「比較明合成」(ひかくめいごうせい)という作業をします。  
いろいろなソフトがあるのですが、無償で優秀なソフトがあるので、「比較明合成」「フリーソフト」で検索してみてください。多くの人が使っているソフトを私も使っています。

ソフトに写真を入れる

大量に撮った写真のうち、曇っていない時間帯の連続して撮影された写真をソフトに入れます。そして「比較明合成」を行います。  
そうすると星が軌跡としてつながった映像が出力されます。  
「比較明合成」の原理的な説明は省きますが、明るい写真が一枚でも入ってしまうと星空の写真になりませんので、晴れた暗い空に星が動いている状態でないとうまくいきません。夜空に白い雲が移動してしまうと、一度でも雲が通った部分は白くなってしまい、星の軌跡が撮れなくなってしまいます。  
ですので、雲が入っていい感じになることが全くないとは言いませんが、星ぐるぐる写真は快晴の方が撮りやすいです。

さて、星が動いていく動画は・・・

点としての星が動いていく動画はいわゆる「タイムラプス動画」で、時間を短縮するコマ送り動画ですので、「タイムラプス」で検索して試してみてください。  
KAGAYAさんの美しい星の動画もタイムラプスの名作ですよね。

星が線になっていく動画は?

実は、上記「比較明合成」写真で星を軌跡として表現する写真を作るフリーソフトに「動画を作成する」というモードがあるのです。  
このときに、星が動くスピードや、星の光の軌跡の長さを調節するパラメータがあり、それぞれ調節することができるのです。  
「比較明合成」のソフトで比較明合成写真を作成するときに同時に動画を作成できるのです。  
コンピュータのスペックと写真の枚数によっては時間がかかりますが、  
じっと見ていても仕方がないので、テレビを見たり、お風呂に入ったりして楽しみに結果を待ちましょう。  
軌跡が長かったり、短かったりいろいろですが何回か試してみて好みの動画を作ってみてください。  

気長に構えることと、最初に完璧を求めすぎず、気に入らなかったらやり直すというスタンスがいいのかな、と思っています。

私がやってしまった失敗の例

編集上の調整も時間がかかりますが撮影上のミスがあると次の快晴の夜を待たなければならないので、できるだけ失敗したくはないものです。  
私がやってしまった失敗の例をあげます。

①ピントがぼけている  
ピントを合わせた後にフォーカスリングに触れ、ピントずれてしまうことがあります。  
そうすると数百枚のピンボケ写真ができあがっています。  
いい感じにぼけてくれれば味になるかも知れませんが、そういう幸運は今までありませんでした。  
②カメラの固定が甘い  
カメラの固定が甘いと少しずつカメラが動いてしまい、合成がうまくいかないです。  
③写真が暗い  
暗いところの作業ですので、目が暗闇になれてしまい、写真を確認したときに適正だと思っても、明るいところで見ると実際には暗いことが今でもあります。  
動画を明るくするのは簡単ですが、後から明るくすると画像があれてしまうので、できれば適正な明るさでもとの写真を撮っておきたいところです。  
④強風でカメラが三脚ごと倒れる  
静穏な夜かと思ったら案外風が強くカメラが倒れていました。睡眠撮影法ではもっとも恐れることです。カメラも三脚も無事で助かりました。  
⑤星の線がなぜか切れる  
星の線がなめらかでないのはインターバルとシャッタースピードの関係と思われます。あるいは長秒時NRがONになっているかもしれません。

やってみよう

とにかく撮ってみましょう。  
長々と書きましたが、冒頭に書いたように「カメラをセットして寝る」という撮影方法をとれば、楽な物です。  
実家の庭でもそんな感じで撮ったことがあり、作品としていいかどうかは別にしても、自分が生まれ育った屋根の向こうで星が線になっているのは自己満足できました。なんとなく時の流れを表現できたような気にもなりました。  
 ここまで読んでくださった方、ものすごい根性ですね。ありがとうございました。撮影はこの長文を読むよりずっとラクです。次の快晴の夜、ベランダや庭でレンズを空に向けて見てください!!

  • 唐澤宗彦

    さいたま局カメラマン

    唐澤宗彦

    今を去ること20年ほど前には小泉内閣時代の国会を担当、米国、中国、トルコ、キプロスやジョージアなど海外取材経験あり。最近は関東甲信中心。

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