埼玉のことを徹底的にこき下ろすことで話題になった映画「翔んで埼玉」
その原作者、漫画家の魔夜峰央さんの原画展がさいたま市で開かれています。
トークショーで、さいたま市内を訪れた魔夜さんにお話を伺いました。
作品誕生の背景、そして埼玉への思いについて魔夜さんが語った言葉とは?
(さいたま放送局 キャスター/武田涼花)
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さいたま市北区のさいたま市立漫画会館で開かれている展示会。
「パタリロ!」や「翔んで埼玉」などの漫画で知られる魔夜峰央さんが、ことし漫画家デビュー50年を迎えたことから企画され、原画や関連資料などおよそ100点が展示されています。
原画展について、詳しい記事はこちら
先日トークショーが行われ、500人近くの応募から抽せんで選ばれた50人が会場に詰めかけました。
マヤさんは、ファンから「ミーちゃん」という愛称で親しまれています。
会場では一問一答形式で、お客さんから出た質問に魔夜さんが答え、笑いと感心する声が上がっていました。
魔夜さんは、4年間埼玉に住んでいたということですけれど、当時の所沢の印象ってどうでしたか。
いいところでした。何もなくて。
所沢に初めて来た時に真っ青な青空と緑色のネギ畑、このコントラストが非常に美しかったのを覚えています。
色っていうのが印象に残ったって事ですか。
私は、新潟の出身なんですけれども、新潟の冬はグレー一色です。
雲でずっと覆われている。そういうところで時々晴れたぞと言っても、雲がものすごくたくさんあるわけですね。 たまにお日様が顔を出すくらいで。
所沢の青空、本当に雲1つない青空って生まれて初めて見ました。感動しました。こんなきれいな空があるんだ。こういう所で生活したら、のんびりするよねという気がしましたね。
それだけいい所だなと思いながら、あの漫画の発想が出たというのはどういった経緯だったのでしょうか。
あくまでも私個人の環境が非常に悪かったので。
最初、新潟から東京へ出ようと思って編集長に相談したんです。西武沿線は漫画家もたくさん住んでいましたので。
編集部へのアクセスもいい、よく知らないままに所沢へ行ってみたら、編集長ともっと怖い編集部長が、にらみをきかせてるわけですよ。
しまった「わなだ」と思った時にはもう手遅れです。
だから、脱出するのに4年かかったんですね。
とにかく逃げたかったということです、その環境から。
別に所沢に恨みはないんだけれども。
ちょうど漫画の環境が、そうした作品につながってたのかなという感じですね。
(翔んで埼玉は)なかなか過激というか、今でこそディスりという言葉で面白みがあったと思うんですけど、当時書いた時に怖さみたいなものはありましたか。
当時はあれぐらい普通でした。昭和ですからね、もっともっと自由な時代です。
むしろ今よりも自由だった?
全然、比較にならない。テレビなんかとんでもないことやっていましたよ。
過激なことなんて横行していたので、私の作品は、なんてことはなかったんですよ。
それが何十年かたって時効が成立した頃にやっと少し何か言えるような時代になってきて注目されて、ヒットしたということなのだと思います。
たまたまですよね。
当時から数十年たっていますけれども、今の埼玉県の印象ってどうですか?
すいません。よく知らないもんですから、ちょっと返答しにくいんですけれど、多分変わらないんじゃないですか。
所沢の駅がやたら立派になったりとか、そういう変化はあるのでしょうけど、県民性はなんら変わってないのではないか、鷹揚で。
埼玉は、何もないわけじゃなくて、何でもあるからかえって個性がない、特徴がない。
個性のある土地とか地域っていうのは、これはすごいけど、あと何もないみたいな所が多いんですね。そういうところが観光地になるわけです。
逆に埼玉は、何でもあるから別に特に目指すところもないし、特に観光地になるわけでもないし、そうする必要もないし。
いいんじゃないですか。住むにはとてもいいところだと思います。
この作品がなければ、今の埼玉ブームは起きなかったと言っても過言ではないと思うんですが、どう感じていますか。
この間、映画の武内英樹監督とも話をしたんですけれども、監督も埼玉の人に感謝されるんですって。
私も埼玉県民の方から「たくさんの人を幸せにしましたね」と言われて。
けなしているのに、なんで褒められる、感謝されるのだろうという思いでいっぱいです。
不思議な感じですか?
不思議です。埼玉県民の鷹揚さ、寛容さに救われてるんでしょうね。
今回の原画展の見どころをお願いします
埼玉で原画展をやるのは初めてらしいです。身近な漫画会館で見られる機会というのは今回最初なので、ぜひ見ていただきたいと思います。
貴重な原画の1枚1枚を、たくさんの県民に見ていただきたいなと思っています。
最後に埼玉県民の皆さんにメッセージをお願いします。
どうぞお幸せに。私は知りません(笑)
これだけディスっても、よくぞ楽しんでるなっていうくらいの感覚ですか?
そうですね。 よく楽しんでいますよね、この状態を。
不思議だなと思います。
「翔んで京都」じゃできなかったですもんね。
私、暗殺されますよ(笑)
埼玉県民の皆さんの寛容さに感謝ということですか。
そうです。 ありがとうございます。
魔夜峰央さんの原画展は、11月26日までさいたま市立漫画会館で行われています。
入場は無料です。